スポーツ

【夏の甲子園「大番狂わせ」名勝負】“九州最弱”を覆した1994年の佐賀商「葉隠れ野球」の熱狂 当時の監督は「甲子園という場所が生徒を成長させた」

佐賀商8-4樟南:樟南のエース・福岡真一郎は9回140球の熱投も満塁本塁打に泣いた

佐賀商8-4樟南:樟南のエース・福岡真一郎は9回140球の熱投も満塁本塁打に泣いた

 夏の甲子園が8月7日に開幕する。高校野球で名勝負はかずあれど、印象に残るのはやはり、優勝候補と目された強豪校がまさかの敗北を喫した番狂わせの名勝負だ。とくに、「無印」の高校生たちが強豪を破り勝ち進む姿は、高校野球ファンが夢中になる。1994年、県立佐賀商業高校が、佐賀県勢初の全国制覇を遂げた。当時同校の監督だった田中公士氏に話を聞いた。

 * * *
 106回を数える夏の甲子園において、深紅の優勝旗を手にした公立校は2007年の佐賀北(佐賀)が最後だ。「無印」の学校が“がばい旋風”に乗り、決勝では野村祐輔(現広島)を擁する広陵(広島)と対戦。4点をリードされた8回裏に押し出し四球で1点を返した後、3番・副島浩史の逆転満塁本塁打が飛び出し、試合をひっくり返した。

 だが、快挙の13年前、やはり公立の佐賀商が県勢初の全国制覇を遂げているのだ。監督だった田中公士氏が語る。

「熊本や鹿児島、沖縄など野球の盛んな九州でも、佐賀は後塵を拝していた。九州大会などの抽選会で、佐賀勢との対戦が決まると喜ばれたものです」

 あの年も目標は一勝だった。初戦の浜松工(静岡)に勝利し、その後も劣勢ムードの試合を逆転で勝ち上がると、佐賀商の練習場に足を運ぶファンが目に見えて増えていく。

「佐賀の学校が甲子園の準決勝に進出したのも34年ぶり。甲子園という場所が生徒を成長させるだけでなく、自信をつけさせてくれましたね」

 1994年の大会は九州勢がベスト8に5校残り、決勝の相手だった樟南(鹿児島)も福岡真一郎、田村恵のバッテリーで優勝候補に挙げられていた。

 2回裏に3点を先制されるも、同点に追いついた佐賀商は9回表に主将の西原正勝に勝ち越しとなる満塁本塁打が飛び出し、勝負は決した。田中氏は言った。

「県勢初の全国制覇が佐賀北だと思われている方が実に多い。それが少し、寂しいんです(笑)」

 葉隠れ野球と呼ばれた佐賀商と、がばい旋風の佐賀北はともに満塁弾で全国制覇を遂げた。歴史は繰り返されるのだ。

取材・文/柳川悠二

※週刊ポスト2024年8月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
渡邊渚さん(撮影/藤本和典)
「私にとっての2025年の漢字は『出』です」 渡邊渚さんが綴る「新しい年にチャレンジしたこと」
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
実力もファンサービスも超一流
【密着グラフ】新大関・安青錦、冬巡業ではファンサービスも超一流「今は自分がやるべきことをしっかり集中してやりたい」史上最速横綱の偉業に向けて勝負の1年
週刊ポスト
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン
12月30日『レコード大賞』が放送される(インスタグラムより)
《度重なる限界説》レコード大賞、「大みそか→30日」への放送日移動から20年間踏み留まっている本質的な理由 
NEWSポストセブン
「戦後80年 戦争と子どもたち」を鑑賞された秋篠宮ご夫妻と佳子さま、悠仁さま(2025年12月26日、時事通信フォト)
《天皇ご一家との違いも》秋篠宮ご一家のモノトーンコーデ ストライプ柄ネクタイ&シルバー系アクセ、佳子さまは黒バッグで引き締め
NEWSポストセブン
ハリウッド進出を果たした水野美紀(時事通信フォト)
《バッキバキに仕上がった肉体》女優・水野美紀(51)が血生臭く殴り合う「母親ファイター」熱演し悲願のハリウッドデビュー、娘を同伴し現場で見せた“母の顔” 
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組の抗争相手が沈黙を破る》神戸山口組、絆會、池田組が2026年も「強硬姿勢」 警察も警戒再強化へ
NEWSポストセブン