下関国際5-4大阪桐蔭 遊撃手からマウンドに上がった仲井慎の好フィールディングが奏功した

下関国際5-4大阪桐蔭 遊撃手からマウンドに上がった仲井慎の好フィールディングが奏功した

「身体が勝手に反応した」

 仲井は無死一、二塁のピンチを背負う。当然ながら大阪桐蔭の策として考えられるのは送りバントだ。一塁手が前に猛チャージして大阪桐蔭の打者・大前圭右にプレッシャーをかけるも、仲井は2ボールにしてしまう。すると西谷監督も遊撃が本業の仲井のフィールディングを警戒しながら、よりアグレッシブに仕掛けていく。投球と同時に走者を走らせつつ、打者はバットを寝かせるというバントエンドランのサインを送ったのだ。

「2ボールになってしまったことで、真ん中にボールを投げて、相手にバントをさせて、二塁走者を三塁でアウトにすることを想定していました。ところが、真ん中に投げようとしたボールが引っかかって、外角にいってしまったんです」

 そのボールを大前がバットに当てる。ちょっとしたライナー性の打球が仲井のグラブに収まり、ボールは二塁、一塁と送られた。飛び出した二塁走者、一塁走者はいずれも戻ることができず、三重殺(トリプルプレー)が成立したのだ。

「さすがにトリプルプレーの練習はしたことがありませんでしたが(笑)、投内連係はしつこくやった練習でした。ただ、自分は基本的にショートを守っていたので、投手のフィールディング練習はあまり参加していなかった。あのプレーは身体が勝手に反応した感じでした。確かに苦しい試合でしたけど、大阪桐蔭を追いかける展開を想定して日頃からケースバッティングなどに取り組んでいました。それが実った試合でした」

 7回の大ピンチのあとのビッグチャンスは9回表にやってきた。1死二、三塁から走者を一掃するタイムリーが飛び出し、逆転に成功。最後の守りは仲井が三者凡退に抑え、5対4で下関国際が準決勝に進出した。偉大な先輩を超えた瞬間だった。

「3年間積み上げてきたものを表現できた試合だったと思います」

 決勝で宮城・仙台育英に敗れたあと、仲井はU-18高校日本代表に選出された。U-18野球W杯はコロナの罹患によって辞退せざるを得なかったものの、2年前の夏、最も輝きを放った球児だった。

その仲井は今、駒澤大学に在籍(2年生)する。体重は入学から10キロ以上増え、自然と球威は増している。高校時代のように遊撃手用のグラブは手にしていない。チームは今春、東都大学野球リーグの二部に陥落してしまったものの、再び一部に昇格させることが投手専任となった仲井にとって喫緊の目標だ。その先に、プロ野球選手という大きな夢がある。

■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

関連キーワード

関連記事

トピックス

赤西と元妻・黒木メイサ
《赤西仁と広瀬アリスの左手薬指にペアリング》沈黙の黒木メイサと電撃離婚から約1年半、元妻がSNSで吐露していた「哺乳瓶洗いながら泣いた」過去
NEWSポストセブン
前回のヒジ手術の時と全く異なる事情とは(時事通信フォト)
大谷翔平、ドジャース先発陣故障者続出で急かされる「二刀流復活」への懸念 投手としてじっくり調整する機会を喪失、打撃への影響を危ぶむ声も
週刊ポスト
単独公務が増えている愛子さま(2025年5月、東京・新宿区。撮影/JMPA)
【雅子さまの背中を追いかけて単独公務が増加中】愛子さまが万博訪問“詳細な日程の公開”は異例 集客につなげたい主催者側の思惑か
女性セブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《永野芽郁のほっぺたを両手で包み…》田中圭 仲間の前でも「めい、めい」と呼ぶ“近すぎ距離感” バーで目撃されていた「だからさぁ、あれはさ!」
NEWSポストセブン
大の里の調子がイマイチ上がってこない(時事通信フォト)
《史上最速綱取りに挑む大関・大の里》序盤の難敵は“同じミレニアム世代”の叩き上げ3世力士・王鵬「大の里へのライバル心は半端ではない」の声
週刊ポスト
連日お泊まりが報じられた赤西仁と広瀬アリス
《広瀬アリスと交際発覚》赤西仁の隠さないデートに“今は彼に夢中” 交際後にカップルで匂わせ投稿か
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎ストーカー殺人事件》「テーブルに10万円置いていきます」白井秀征容疑者を育んだ“いびつな親子関係”と目撃された“異様な執着心”「バイト先の男性客にもヤキモチ」
NEWSポストセブン
不倫疑惑が報じられた田中圭と永野芽郁
《離婚するかも…と田中圭は憔悴した様子》永野芽郁との不倫疑惑に元タレント妻は“もう限界”で堪忍袋の緒が切れた
NEWSポストセブン
成田市のアパートからアマンダさんの痛いが発見された(本人インスタグラムより)
《“日本愛”投稿した翌日に…》ブラジル人女性(30)が成田空港近くのアパートで遺体で発見、近隣住民が目撃していた“度重なる警察沙汰”「よくパトカーが来ていた」
NEWSポストセブン
小室圭さんの“イクメン化”を後押しする職場環境とは…?
《眞子さんのゆったりすぎるコートにマタニティ説浮上》小室圭さんの“イクメン”化待ったなし 勤務先の育休制度は「アメリカでは破格の待遇」
NEWSポストセブン
食物繊維を生かし、健全な腸内環境を保つためには、“とある菌”の存在が必要不可欠であることが明らかになった──
アボカド、ゴボウ、キウイと「◯◯」 “腸活博士”に話を聞いた記者がどっさり買い込んだ理由は…?《食物繊維摂取基準が上がった深いワケ》
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
「週刊ポスト」本日発売! トランプ圧力で押し寄せる「危ない米国産食品」ほか
NEWSポストセブン