2013年2月、映画「おしん」の製作発表に出席した泉ピン子(左)と脚本家の橋田寿賀子さん(時事通信フォト)

2013年2月、映画「おしん」の製作発表に出席した泉ピン子(左)と脚本家の橋田寿賀子さん(時事通信フォト)

 TBSの人気ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』を手掛けた石井さんとは一時期は蜜月関係にあったというが、2021年4月に亡くなった脚本家の橋田さんの遺骨をめぐり、「火葬場で特別に分けてもらった」「遺骨の一部を海に散骨する計画だ」と自身の朗読劇の記者会見で述べたことで、石井さんとの関係がこじれたという。橋田氏が理事長だった「橋田文化財団」がその話を全面否定し、石井氏はのちに「ピン子さんは”嘘つき村の村長さん”なんです」とコメントしたのだ。

 嘘には大きく分けて自分の利益のためにつく嘘と他者を傷つけないための嘘や社会の利益のためにつく嘘があるといわれる。「嘘つき村の村長さん」という表現には、ピン子さんがこれまでにも嘘をついていたことが仄めかされているようだが、それらは許せる嘘だったのかもしれない。しかし、遺骨となると話は違う。橋田氏と付き合いの長い石井氏にとって、それは許せる嘘ではなかったのだろう。

 彼女の見栄や利害のために仕立てられた美談は、周囲に得する者がいない「利己的な嘘」。だがきっとピン子さんは、嘘だとバレても周りはこれまで通りで気にせず聞き流してくれる、世間は良い話だと誉めそやし持ち上げてくれると考えたのだろう。「自己中心性バイアス」によって他人の感情や状況を自分勝手に解釈したのだ。このバイアスが強いと、他人の感情の強さがわからなくなるという。ピン子さんとしては、当時、絶縁関係になるほどの嘘をついたという認識はなかったのだろう。

 橋田氏の追悼ドラマ『ひとりぼっち -人と人をつなぐ愛の物語-』でも、渡鬼ファミリーと呼ばれる『渡る世間は鬼ばかり』の出演者たちの多くが出演したが、ピン子さんの姿はなかった。自己中心性バイアスによってついた嘘で、これまでの人間関係から取り残されガラパゴス化しまったのだ。

 最近はテレビ出演もめっきりすくなくなったピン子さんだが、独自路線を歩み続けるその姿は、自身のSNSで見ることができる。

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