「森のお墓」と銘打っている
現場を訪れてわかった「遺骨」の様子
騒動の発端は昨年12月の町議会だった。墓地ではない場所で、火葬した遺骨が「自然葬」として木の根元などに埋葬されている──そんな話が寄せられた議員が「埋葬は墓地以外の区画で行なってはならないが、山林において執り行なわれていることを地元住民から聞いた。町は現場を確認しその実態を把握しているのか」と質問した。
大台町の担当課長(当時)は「自然葬(樹木葬)がされているのは認識している。墓地としての許可をとるよう促していきたいと考えている」と発言した。。
当時は地元紙で報道されただけだったが、半年以上経った今年7月、改めて地元紙のほか中京地区のテレビニュース、ワイドショーで「むき出しの人骨」と映像付きで報じられると全国区の話題になったのだ。地元住民からも戸惑いの声が挙がる。
「たまに車で通りますが、人の骨があるとなると……不気味ですよね」
現場を尋ねてみた。県庁所在地の津市から特急列車で50分、無人駅のJR三瀬谷駅を降りて車で40分ほど、山に囲まれた国道沿いの斜面に散骨現場はある。
「この辺の住民は車で買い物などに出ていく。観光客がタクシーで乗り降りすることはほどんどなく、登山に行く人をたまに駅から乗せるくらいですね」
タクシーの運転手がこう言うように山林近くの国道は人通りがほとんどなく、時折車が通る程度だ。近くには、国交省の水質調査で「日本一」の清流と認定されたこともある宮川が道路を挟んで流れている。現場である山林は国道を挟み、その川を挟んだ対岸には集落が見える。
道路から山林に目を凝らすと、木に墨のような黒い字で書かれた人名が見えるが人骨まではさすがに確認できない。管理者の許可を得て山林に入ると、木の根元には木桶が埋められており、苔がかぶせられている。苔をどけると細かくなった遺骨の破片が露わになった。
報じられていた「むき出しの遺骨」という響きから、大腿骨などがゴロゴロ転がっている印象も受けるが、木桶の上に細かくなった骨が置いてあるという状態だ。山林は私有地で一般の人は入ることはできないため、「目にする機会」はほとんどない。
「近隣の地区には300人程度が住んでいますが、現場から100メートル以内に住居はありません。川沿いを散歩をする住民もいるでしょうが、歩道もない国道ですのでそれも少数だと思います」(大台町の住民)