自然葬に用いる桶と黙雷和尚
自然葬を行なう和尚は行政の対応に不満
この現場での自然葬が始まったのは2007年にさかのぼる。「自然宗佛國寺」という宗教法人が約4500坪のこの山林を買い取り『森のお墓・いのちの森』と名付け、同時に本山を現在の大台町に移転した。自然葬は現在12区画に及び、永代供養の場合は1人21万円となっている。佛國寺の黙雷和尚がこう話す。
「昨年11月に木の骨壺3個が掘り返され、遺骨が散乱しました。その後、町は現場確認もせずに寺に来て一方的に『墓地埋葬法(墓埋法)違反だ。町に墓地の申請をしなさい』と言われました。こうした状況を地元紙が報道し、騒動の発端となったのです」
昭和23年に施行された『墓地、埋葬等に関する法律』(墓埋法)では「埋葬」に関しての項目で「死体を地中に葬ること」と記されている。さらに同法では「墓地外の埋葬等の禁止」についても定められており、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に行ってはならない」などと書かれている。また「墓地」の運営には自治体の許可が必要になる。
一方、海や地表に骨を撒く「散骨」については墓埋法では言及が無い。厚労省が出しているガイドラインでは散骨について「墓埋法に基づき適法に火葬された後、その焼骨を粉状に砕き、墓埋法が想定する埋蔵又は収蔵以外の方法で、陸地又は水面に散布し、又は投下する行為」と規定されており、水源近くで行なわないことや、地域住民や周辺土地所有者への配慮などが記されているが、罰則はない。
墓地の経営に関する許可の権限は三重県から大台町に委譲されており、墓埋法では骨を地中に埋める「埋葬」となれば町への墓地開設の申請が必要になるが、埋めずに地表に撒く形の「散骨」であれば、厚労省のガイドラインに沿う形になる。