石破茂・首相の短期決戦の賭けはどんな結果となるか(時事通信フォト)
しかし、悩んでいる人々が大勢いるのであれば、その悩みを理解し、寄り添って、少しずつ社会制度をあるべき方向に変えていく──これを「柔軟保守」といい、本来の保守の在り方だ。
石破氏が言う保守の精神とも合致しているのではないか。
世界は進歩・進化していくもの。その変化をストップさせようとする岩盤保守のような考え方はイデオロギーであり、本来の保守ではない。だから今後、石破氏が岩盤保守層に対抗して、柔軟保守としての姿勢をどう示せるかが注目すべきところだと思う。
ただ、石破氏が外交安保政策として打ち出している「アジア版NATO」は、日本でもっと議論を重ねて、国会で法律を改正するなどの必要がある。現実の2歩、3歩先を行く急進的な話で、保守的とは言いにくい。
選挙後に始まる政策論争で、真価が問われていくだろう。
【プロフィール】
橋爪大三郎(はしづめ・だいさぶろう)/1948年生まれ、神奈川県出身。社会学者。大学院大学至善館教授。著書に『おどろきの中国』(講談社現代新書)、『中国VSアメリカ』(河出新書)、『中国共産党帝国とウイグル』『一神教と戦争』(ともに集英社新書)、『隣りのチャイナ』(夏目書房)など。近著に『火を吹く朝鮮半島』(SB新書)。
※週刊ポスト2024年11月1日号