国内
石破茂首相は保守か、エセか

【保守政治家の正体】橘玲氏が分析 石破自民が「立憲民主よりリベラル」という逆転現象はなぜ起きたのか

作家の橘玲氏が石破自民の立ち位置について分析

作家の橘玲氏が石破自民の立ち位置について分析

 来る総選挙は、自民党総裁の石破茂首相と野党第一党・立憲民主党の野田佳彦代表がともに「保守」を自任する政治家としてぶつかり合う。だがこの2人、果たして“本物の保守”なのか。作家の橘玲氏が石破自民の立ち位置について分析する。

 * * *
 石破茂氏が総裁選前に『保守政治家』と題した本を出版したのは、「保守と右翼の違い」を示したかったからではないか。

 この本で石破氏は、「保守」は伝統を重んじつつ、異なる意見も取り入れる寛容さを持つが、「右翼」は愛国を盾にSNSなどで自分と意見の違う者に“反日”のレッテルを貼る集団だと書いている。両者を明確に分けたことは素直に評価したい。

 さらに石破氏は、「保守とはリベラルのことである」とも主張する。

 18世紀の政治哲学者で「保守思想の父」と呼ばれるエドマンド・バークは、フランス革命を批判し、伝統に基づく漸進主義を提唱したことで知られるが、インドの植民地主義に反対する、当時ではリベラルな思想家だった。

 私自身は、「保守」とは試行錯誤の末に積み上げてきた文化や伝統を尊重する立場で、「リベラル」はそれに加えて、他の国で成功した社会実験も積極的に取り入れていこうとする立場だと定義している。夫婦別姓や同性婚は、国際社会では当たり前になったので日本も倣うべきだというのがリベラルの主張になる。

「保守とはリベラル」と言う石破氏は、リベラル政党・立憲民主党の代表でありながら「中道保守」を自任する野田佳彦氏とあまり違いがないように映る。混乱の原因は、政策によっては、自民のほうが立憲民主よりリベラルだからだろう。

 たとえば北欧のような社会保障制度を実現しようとすれば、国民をマイナンバーで効率的に管理するしかない。ところが日本では、“リベラル”を自称するメディアや政党が「紙の保険証に戻せ」と大合唱した。リベラルとは本来、科学技術によってより良い社会をつくろうとする進歩主義のはずなのに、日本では高齢者の既得権を守るラッダイト(注:19世紀のイギリスで産業革命による機械化に反対した労働者の機械撲滅運動)になっている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

現地取材でわかった容疑者の素顔とは──(勤務先ホームページ/共同通信)
【伊万里市強盗殺人事件】同僚が証言するダム・ズイ・カン容疑者の素顔「無口でかなり大人しく、勤務態度はマジメ」「勤務外では釣りや家庭菜園の活動も」
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」2003年開催時のスリーショット(撮影/山崎力夫)
《巨人V9の真実》400勝投手・金田正一氏が語っていた「長嶋茂雄のすごいところ」 国鉄から移籍当初は「体の硬さ」に驚くも、トレーニングもケアも「やり始めたら半端じゃない」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
フランクリン・D・ルーズベルト元大統領(写真中央)
【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「昭和100年史」】戦後の日米関係を形作った「占領軍による統治」と「安保闘争」を振り返る
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン