ライフ

《高輪ゲートウェイ駅前開発》3年前は盛りあがった「高輪築堤」保存論争、このまま尻すぼみでよいのか

2024年12月8、9日に公開された高輪築堤の遺構(撮影:小川裕夫)

2024年12月8、9日に公開された高輪築堤の遺構(撮影:小川裕夫)

 品川の大規模再開発工事をすすめていた2019年、日本の鉄道の始まりの歴史を記す「高輪築堤」が見つかった。地権者であるJR東日本は保存に後ろ向きだったが、三代目歌川広重の錦絵に残る、東京湾の漁場へ向かう船の上を蒸気機関車の様子が現実にあったと世間は沸き立ち、政治も動いて一部の保存が決まった。その高輪築堤は別の個所が発見されたり、今後も新たに見つかる可能性が高いが、保存や保護に対する議論は残念ながら低調になりつつある。ライターの小川裕夫氏が、新たに発掘調査と一般公開が行われたことをきっかけに、高輪築堤の今後についてレポートする。

 * * *
 2024年12月8、9日に東京・港区の高輪ゲートウェイ駅前で進められていた高輪築堤の発掘現場が一般公開された。

 高輪築堤は1872年に国内最初の路線となる新橋(後の汐留)駅―横浜(現・桜木町)駅間の開業時に東京湾の浅瀬に建設されたもので、線路付け替えや品川車両基地などで使われなることによって姿を消していた。ところが、2020年に山手線の新駅を建設するための工事を実施した際に石垣の一部が発見され、歴史に埋もれていた高輪築堤が残存している可能性があることから港区とJR東日本が調査を開始。その調査で高輪築堤の遺構が確認される。

 新駅は高輪ゲートウェイ駅と命名されて2020年に開業したが、その後も発掘と調査は続けられた。出土した遺構は菅義偉首相(当時)も視察し、歴史的にも価値があるとしてできるだけ保存するように指示。菅首相の指示を受けて、高輪築堤の一部が国指定史跡となった。

 高輪築堤の一部は現地保存されることになったが、大部分は記録保存・移設保存となった。そして、2025年3月に一帯はTAKANAWA GATEWAY CITYとして、まちびらきする予定でプロジェクトが進んでいる。

「事業地内は南北に約1.3キロメートルありますが、そのうち第1期の事業地内からは900メートル弱の遺構が残存していることを確認しています。そのため、港区は2021年に高輪築堤を現地保存するように要望書を提出しました」と説明するのは、港区教育委員会事務局推進部図書文化財の担当者だ。

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン