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《改正法が施行》大麻の規制強化で飛び出す「陰謀論」 ”新物質”が添加され危険ドラッグ化する”薬物市場”の闇

大麻の花。幻覚を引き起こす成分が含まれており、日本では一般の栽培や所持が禁止されている(イメージ)

大麻の花。幻覚を引き起こす成分が含まれており、日本では一般の栽培や所持が禁止されている(イメージ)

 様々な規制に対して海外事情を事例に出し、日本は世界に取り残されているので規制を撤廃せよと主張されることがよくある。だが、規制撤廃派が訴える海外事情は、彼らにとって都合がよい事情だけを抜きとっていることも少なくない。12月12日に施行された改正麻薬取締法と改正大麻取締法により、大麻由来成分のCBD(カンナビジオール)の販売規制基準が明確になった。違法と合法の線引きがはっきりしたことを愛好家は歓迎するのかと思えば、そうでもないらしい。『脱法ドラッグの罠』を上梓するなど、長年、違法薬物関連の取材を続けるライターの森鷹久氏が、危険ドラッグ化がすすむCBD商品についてレポートする。

 * * *
「日本最大級のCBDショップ」を自称し、ラブホテルや風俗店、ナイトクラブなどが立ち並ぶ東京・渋谷で営業していた「GRAY TATOO」なるショップの経営者が、違法な麻薬成分を含む植物片を客に販売した疑いで警視庁に逮捕された。

 このショップでは、大麻由来の成分(CBD)を含む植物片やリキッドが販売されていることで知られていた。今回の逮捕容疑はCBDではなく、それ以外の違法な麻薬成分を含む商品を「合法」と偽って販売した疑いが持たれたことによる。店の利用客から幻覚や体調不良を訴える声が相次ぎ、これまでに11人が救急搬送されたことが確認されており、従来の成分に新たな物質を加えた新しい商品によって、人への悪影響が出た格好である。かつて脱法ハーブが「危険ドラッグ」へとたどった道が、いまも続いていることが分かる。

 筆者は「危険ドラッグ」が問題視された十数年前から、最初は「合法」をうたって販売される様々なドラッグに関する取材を続けている。TBSがニュースとして公開した、摘発直前の店内取材映像を見る限り、客も店もある程度「販売されている商品が違法である」こと、お互いに良くないことをしているのを承知でいると受け取れた。筆者も取材でこれまで同様の光景を幾度と目撃してきたが、お互いあうんの呼吸ともいうべきか、薬物を「隠語」で呼んだり、その効能を確認するなど、怪しげな薬物の受け渡しの作法をよく承知しているのだ。

本当にその成分は「合法」で「人体に影響がない」のか

 数年おきに「合法」をうたう植物片やリキッドが、世に出回る。筆者が確認できたものはことごとく、法規制の穴をつくような形、その時点で違法と言い切れないかもしれないがグレーな状態で販売されていた。当然、すぐに当局によって規制される。そして、その新たな規制をすり抜けようと成分の化学式を少し変えただけの「新物質」が、新しい「合法」なものとして販売される。そうした過程を繰り返す中で、摂取することで人体にどのような影響を及ぼすか全くわからない化学物質が完成してしまい、人の健康を損なうだけでなく、物質の作用によって正常でなくなった人が事故を発生させたこともあった。その結果、「新物質」とはまったく関わりが無い一般人が死亡する事件に至ったのだが、繰り返される悲劇を知ってもなお、今の規制はおかしいと主張する人たちがいる。

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