警視庁の街頭防犯カメラシステムは各カメラが撮影した映像を管轄の警察署及び警視庁本部に送っている。新宿区歌舞伎町地区では2022年2月27日に運用開始された(時事通信フォト)

警視庁の街頭防犯カメラシステムは各カメラが撮影した映像を管轄の警察署及び警視庁本部に送っている。新宿区歌舞伎町地区では2022年2月27日に運用開始された(時事通信フォト)

 防犯カメラシステムが導入される前、1990年代に中国人グループらは歌舞伎町で様々な事件を引き起こした。中華料理店で青龍刀を振り回し、中国人マフィア2人を殺害した事件は歌舞伎町界隈では有名な事件である。そのような中、歌舞伎町周辺では街のあちこちに防犯カメラが取り付けられることになった。この防犯カメラによるリレー捜査が今回の事件同様、容疑者の特定の決め手となった事件がある。2002年9月、歌舞伎町の喫茶店で中国人マフィアらが暴力団幹部と組員の2人を拳銃で殺傷した「パリジェンヌ事件」である。

 歌舞伎町にある喫茶店「パリジェンヌ」ではその前日、暴力団組員と中国人マフィアらが、歌舞伎町のスナックにて双方の間で起きた諍いのため、話し合いの場を持っていた。この事件をよく知る元刑事は「暴力団組員らは、自分たちのシマで中国人が大きな顔をしてのさばるのが許せなかった。中国人は頭を下げれば自分たちのメンツがつぶれる。歌舞伎町を追い出されると思ったようだ」という。

 事件当日、マフィアらは席に着くとまともに話し合いもせず、組員2人に向けて発砲し逃走。暴力団幹部は死亡、組員は重傷を負った。加害者らは蜘蛛の子を散らすように、現場から逃げて行った。当時、捜査に当たっていた元刑事は「拳銃を発砲したのは日本人かアジア系外国人という目撃情報があった。店内でいきなり暴力団に拳銃を向けていることから、日本人なら暴力団同士の争い。アジア系外国人なら暴力団と争うことを厭わない中国人マフィアだろうと踏んでいた」という。歌舞伎町では頻繁に中国人マフィアらと地元の暴力団の間でトラブルが発生、双方一歩も引くことのない勢力争いをしていたのだ。

 すぐに店周辺の防犯カメラ映像が確認された。周辺の防犯カメラからも容疑者が映った映像が次々と見つかり、彼らの足取りがわかった。被害者となった組員たちは、どこの道からどのように現場となった喫茶店まで移動してきたのか。加害者の中国人マフィアたち誰がどこからきて、誰がどのビルから出てきたのか。どこでどの男が合流し、どこで集まったのか。どの道を通り、どこの角を曲がり現場までやってきたのか。そしてどこへと逃げていったのか。防犯カメラのリレー捜査で容疑者が特定され、警視庁は最終的に中国人8人を逮捕した。そのうち5人が吉林省出身であった。元刑事は「当時の画像は荒く、今ほど鮮明には映っていないが、防犯カメラの映像が事件の早期解決に役に立った事例として記憶に残っている」と語った、

 この事件が起きた数日後、歌舞伎町では中国人が経営する飲食店で異臭騒ぎが勃発した。さらに幹部を殺された暴力団組織が、容疑者らの運転手を務めた中国残留孤児3世の男を拉致し、刃物で刺殺し、新宿区上落合の路上に遺体を遺棄するという事件も起きた。その後、新宿区内では歌舞伎町を中心に防犯カメラが次々と設置された。

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