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歯周炎が老化を加速、日本の研究で明らかに、美容医療でも関心が高まる老化予防、藤田医科大学や慶応義塾大学などの研究グループが発表

虫歯治療の注意点は?(イメージ)

歯周炎が老化を加速させることが日本の研究で明らかに(イメージ)

 美容医療の分野では、老化や若返りへの関心がますます高まっている。

 そうした中で、歯肉が赤く腫れる歯周炎による炎症が、老化を加速させることが日本の研究で明らかになった。

歯周炎が全身に「炎症性老化」を起こす

 美容医療の分野では、内科的な視点から健康的な美しさを追求することが、美容を考える上で欠かせない視点となっている。「ロンジェビティ(longevity)」は健康的な長寿を意味する言葉で、生物学的年齢(注:生まれてからの年月によって決まる「暦年齢」とは異なり、体の組織や細胞の老化の度合いによって決まる年齢のこと。)の若返りは、その測定が可能になるにつれて関心を集めている。

 老化の原因はさまざまだが、中でも「炎症」が大きな要因として注目されている。炎症は体を赤く腫らせるなどの症状を引き起こし、老化を進める主な要因のひとつとされる。老化に伴う病気や機能低下を引き起こすと考えられている。

 ヒフコNEWSでは、「SASP(Senescence-Associated Secretory Phenotype、老化関連分泌表現型)」という老化を引き起こす仕組みを紹介している。炎症を引き起こす細胞が、老化のメカニズムに関連する可能性があることも分かってきている。老化細胞は、周囲の老化を引き起こすという、負の連鎖をもたらすのだ。

 今回の報告によると、歯周炎は歯周病が進行した状態であり、炎症が長期化すると、健康に悪影響をもたらすことが分かっていた。歯周炎が全身の血管にダメージを引き起こすことなどが示されているからだ。

 今回、藤田医科大学、慶應義塾大学、東京歯科大学、東京大学の共同研究チームが、歯周炎が老化につながることを、実験を通して発見した。

 マウスを用いた実験では、認知機能、骨密度、筋力に影響が及んでおり、健康維持に深刻なダメージを与える可能性があると報告している。研究チームは脳、骨、筋肉を調べ、そのメカニズムも確認したという。研究グループは、こうした変化について「炎症性老化」と呼んでいる。

骨密度の回復には追加治療が必要

 今回の研究によると、いったん骨密度が低下すると、歯周炎を治療しただけでは、骨密度が回復せず、追加の治療が必要になることも明らかになった。そのため早期から歯周病を予防することが、老化を防ぐ上で重要である可能性がある。

 また、歯周炎があると筋肉の疲労が起きやすくなることも明らかになった。

 研究グループは、高齢者医療の対策を考える上で、今回の研究を踏まえ、医科と歯科の連携が重要だとしている。また、アスリートにおいても、歯周炎が筋肉を疲労させやすくすることから、歯周病ケアが重要だと指摘している。

 歯の健康は美容とも深く関連しており、今回の研究は、それが老化予防にもつながることを示している。歯のケアの重要性をあらためて認識するきっかけとなるかもしれない。

参考文献

Kase Y, Morikawa S, Okano Y, Hosoi T, Yasui T, Taki-Miyashita Y, Yakabe M, Goto M, Ishihara K, Ogawa S, Nakagawa T, Okano H. Multi-organ frailty is enhanced by periodontitis-induced inflammaging. Inflamm Regen. 2025 Feb 3;45(1):3. doi: 10.1186/s41232-025-00366-5. PMID: 39894806; PMCID: PMC11789345.

歯周炎による炎症は老化を促進して各種臓器の障害を招く-高齢者診療と歯科診療の連携による包括的な診療の重要性を示唆-

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

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