大阪・関西万博のゲート前に並ぶ人たち(時事通信フォト)
正確な場所を案内できなかった警備員は、駐車場スタッフがいるデジタルサイネージ(電子看板)の場所を教えたが、男性は警備員を「なぜ分からないんですか?」と詰問。警備員が「申し訳ありません」と謝罪し、再度デジタルサイネージの場所を教えた。男性がその場所へ向かったが、警備員が無事に行けるか確認しようとしたところ、男性が踵を返し大声を出して詰め寄ってきた。警備員は身の危険を感じて、自ら土下座したというのが経緯だという。
身の危険を感じて、突発的に土下座したという警備員の心情も理解できる。昨今は街中や電車や地下鉄での迷惑行為でも、下手に注意したり、相手を刺激したりすると、注意した方が危ない目にあうというケースもみられる。これ以上のトラブルを避け、周囲に迷惑をかけないためと、自己保身の手段として行ったのだろう。自分から土下座という方法でこの一件を終わりにしようとした警備員にしてみれば、動画が拡散されたことは不本意だったはずだ。だが万博会場という注目を集める場所で、警備員が客へ土下座する姿は、見た者にとって衝撃的な光景だ。
男性が土下座しろと言ったかどうかはわからない。だが土下座しろ!という言葉がなくても、相手が威圧的な態度で出ていれば強要と取られやすい。日ごろから世間やメディアで見聞きするさまざまなハラスメントに対して、怒りや憤りを感じている人たちならなおさら、そう思うだろう。土下座からくる強烈なマイナスイメージが多くの人々の感情を逆なでし、状況や詳細を確認するより、目にした映像の印象そのものにメディアや人々が反応してしまった結果が今回の拡散と炎上ではないだろうか。
男性はその後やってきた家族とともに立ち去ったといい、家族は申し訳なさそうにしていたという。ネット上では男性を特定するような書き込みが始まっている。土下座の経緯を検証することなくセンセーショナルに報じたメディアは正しかったのか、その姿勢も問われるだろう。
