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「妊娠の経過は取り扱わないものとする」“低出生率”の一要因になっている“ニッポンの性教育(通称・はどめ規定)”の罪《妊活世代の誤った感覚》

東京都特定不妊治療

東京都特定不妊治療

 出生率が低下している日本。実は体外受精の実施数が世界一多い「不妊治療大国」でもある。しかし多くの人たちが体外受精にも臨んでいるにかかわらず、出生率アップに結びついていない。採卵1回あたりの出生率が何と最下位(2016年)なのだ。

「妊娠は、簡単にできるもの」

 フリーランス記者・松岡かすみ氏は、“妊活世代”がどこかでこういった感覚を持っていることが一つの要因になっているのではないかと分析する。そしてこの感覚を育てているのは、世界基準から遅れた「日本の性教育」なのだという──。

 松岡氏の著書『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』(朝日新聞出版)より、日本の性教育の遅れについてお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全4回の第2回。第1回を読む】

 * * *
 なぜこれほど多くの人が体外受精に臨むのに、出生率に結びつかないのか。

 その大きな要因の一つに、日本は不妊治療を開始する患者の年齢が、諸外国に比べて高いことがある。日本では体外受精を開始する平均年齢が40歳。一方、日本に次いで体外受精件数が世界第2位の米国では34歳だ。さらに詳しく見ていくと、治療効果が期待しやすい35歳未満の治療者が、日本は米国と比べて12.2%低い。また妊娠する力が低くなる40歳以上の治療者は、11.9%高いことが示され、不妊治療を開始する年齢の遅さが出生率の低さに影響していることが指摘されている(ニッセイ基礎研究所「米国の不妊治療の現状とは?」レポート、2022年)。

「40代でも余裕で出産できる」と思ってしまう人の“落とし穴”

 日本では、不妊治療を開始する患者の年齢が、諸外国に比べて高いのはなぜなのか。それは妊娠・出産についての性教育の問題が大きく影響していると見られる。義務教育で正しい妊娠・出産の知識を学んでいないがゆえに、芸能人の高齢出産のニュースなどを見て、「40代でも余裕で出産できる」と思ってしまう人も少なくはない。「産みたいのに産めない」という状況になって初めて、自分の生殖機能の現実と向き合うことになる現実は、一刻も早く改善されてしかるべきだと思う。

 50歳で卵子提供を受け、妊娠・出産した国会議員の野田聖子さんは、週刊誌「AERA」のインタビューで、こう語っている。

「私は40歳で結婚し、不妊治療を経験しました。卵子提供によって50歳で出産した時にはバッシングを受けました。後悔はありませんが、50歳で産まざるを得なかった原因は性教育です。結婚するまで生理があれば何歳でも産めると思っていましたから。たとえ国会議員であったとしても、義務教育で学んでいないことは知らないのです。妊娠のプロセスを知らないままキャリアを重ねて高齢出産や不妊で悩まないためにも、知っておいてほしい知識です」(2023年1月30日号)

 こうした声は、取材した女性からも数多く聞かれた。「35歳を過ぎたら高齢出産になることとか、卵子の加齢で妊娠率が低下するとか、そういう類のことを全然知らなかった」「“40代で出産したらいい”って普通に思っちゃってた」などと同様の声は、卵子凍結をした他の女性や不妊治療中の女性たちからも、よく聞かれた言葉だ。「妊娠のタイムリミットについて、もっと早くに知っていたら」という後悔の声も少なくない。

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