日曜劇場『キャスター』(TBS系)で主演を務める俳優の阿部寛
この春のクール、さまざまなジャンルのドラマが放送されているが、その中でテレビ局を舞台にしたドラマが増えている。しかも、どの局も看板枠で放送しているのが特徴だ。その背景についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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4月が終わって今春のドラマがそろった中、ネット上で「また?」という声があがっているのはテレビ局が舞台のドラマ。
『キャスター』(TBS系、日曜21時)は、型破りなキャスター・進藤壮一(阿部寛)が闇に葬られた真実を追究し、悪を裁いていく社会派エンターテインメント。舞台は視聴率低迷にあえぐ報道番組「ニュースゲート」で、メインキャスターの進藤を筆頭に、総合演出・崎久保華(永野芽郁)、AD・本橋悠介(道枝駿佑)、プロデューサー・山井和之(音尾琢真)、報道局長・海馬浩司(岡部たかし)、編集長・市之瀬咲子(宮澤エマ)ら計13人の関連人物が登場します。
次に『恋は闇』(日本テレビ系、水曜22時)は、情報番組のディレクター・筒井万琴(岸井ゆきの)と週刊誌のフリーライター・設楽浩暉(志尊淳)の恋と連続殺人事件をめぐるラブサスペンス。メインの舞台は万琴が担当する情報番組「モーニングフラッシュ」であり、総合演出・野田昇太郎(田中哲司)、プロデューサー・蔵前沙樹(西田尚美)、新人ディレクター・木下晴道(小林虎之介)、MC・児嶋一哉(児嶋一哉)ら多くの人物が登場します。
さらに『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系、月曜21時)は、吉野千明(小泉今日子)と長倉和平(中井貴一)のスローな恋模様を描いた11年ぶりのシリーズ第3弾。千明はテレビ局のドラマゼネラルプロデューサーであり、前2作でおなじみのスタッフや制作現場のシーンがたびたび登場します。
『キャスター』はTBSの看板ドラマ枠“日曜劇場”であり、『恋は闇』は日本テレビの看板ドラマ枠として昨春まで33年にわたって放送された“水曜ドラマ”の復活第1弾。『続・続・最後から二番目の恋』はフジテレビの看板ドラマ枠“月9”。いずれも局にとって重要な作品の舞台にテレビ局を選んだ様子がうかがえます。
流行語大賞『ふてほど』もテレビ局
テレビ局を扱ったドラマと言えば、前期の『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系)も主人公の大森一平(香取慎吾)は不祥事で退社したテレビ局の報道マンで、関連シーンが何度かありました。また、『晩餐ブルース』(テレビ東京系)もテレビ局のドラマディレクター・田窪優太(井之脇海)が主人公の物語でした。
昨年を見ても、「新語・流行語大賞」の年間大賞を受賞した『不適切にもほどがある!』(TBS系)もヒロイン・犬島渚(仲里依紗)がバラエティ担当のアシスタントプロデューサーだったほか、情報番組のプロデューサー、MC、イケメン気象予報士、フロアディレクター、ドラマプロデューサー、インティマシーコーディネーター、社内カウンセラー、考査部、SDGs推進課などさまざまな立場の関係者が登場しました。
また、単発ドラマでも芳根京子さんと江口のりこさんが報道記者を演じた『テレビ報道記者~ニュースをつないだ女たち~』(日本テレビ系)、深夜のテレビ局で起きる出来事を描いた『生ドラ!東京は24時』(フジテレビ系)などもありました。
その他、主人公の倉内桔梗(中谷美紀)が報道番組「日曜NEWS11」のキャスターだった『ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜』(フジテレビ系)。バラエティ担当ながらドラマ制作に挑む吉澤未來(伊藤万理華)が主人公の『パーセント』(NHK総合)。主人公・近藤麻美(安藤サクラ)が3周目の人生で日本テレビのドラマ制作スタッフになった『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)。テレビ局の女性アナウンサー・浅川恵那(長澤まさみ)が冤罪事件を追う『エルピス-希望、あるいは災い-』(カンテレ・フジテレビ系)なども記憶に新しいところでしょう。
なぜテレビ局を扱ったドラマは、近年続いていた上に、ここにきてますます増えているのでしょうか。