週刊ポストの名物企画でもあった「ONK座談会」(撮影/山崎力夫)
ゴールデンボーイと悪役
当時についてカネやんは「巨人戦しかテレビに映らなかったし、満員になるのも巨人戦だけ。田舎の両親に勇姿を見せるのは巨人戦しかなかった。誰もが頑張ったのが巨人戦じゃった」と話した。
それはカネやんにとっても例外ではなかった。巨人戦になれば志願登板し、できるだけ長くマウンドに残ろうと完投を目指した。そんな中に登場したのが「東京六大学のスター・長嶋茂雄」だった。
「長嶋はオープン戦9試合で7ホーマーを放っていた。当時のマスコミは長嶋をゴールデンボーイと呼び、巨人キラーの金田が悪役だったからな」
巨人ファンは“憎き金田正一”を打ち砕いてくれるものと期待して開幕を待ちに待った。しかし、それがカネやんの快投を生むことになった。
「野球ファンは英雄が勝つものだと思っているが、野球は悪役が勝つから面白い。当時のワシはヤジられればヤジられるほど燃えた。そんなエース級の選手がどこの球団にもいて、筋書きのないドラマを演じた。巨人も王(貞治)や長嶋を中心にそれらに打ち勝ってきた。だから巨人には人気があったんじゃ」
結局、長嶋さんのルーキーイヤーはカネやんに28打数5安打、1四球、1本塁打、11三振で、打率1割7分9厘と完全に押さえ込まれている。
「長嶋がすごいのは、2年目にワシから本塁打3本を含む3割3分3厘も打ったこと。その後は完全に打ち崩されてしまった。それが長嶋の底力だった」