1996年の秋季キャンプ(撮影/山崎力夫)
●1999年/前年は王ダイエーにスパイ疑惑(※ダイエーの3選手が個人的に学生アルバイトを雇い、サイン盗みの伝達役をさせた疑惑。球団側は否定するも、パ・リーグの特別調査委員会は「疑惑を完全には払拭できない」として、ダイエー球団社長らに職務停止の制裁を下した)が発覚
金田:ID野球ともてはやされているが、あれはサイン盗み野球なんじゃよ(とキッパリ)。
王:何いってるの、カネさん。あんた本当に訴えられるよ!
長嶋:それをいっちゃダメだよ、カネさん(と席を立とうとする)。
金田:じゃ聞くが、ID野球とかいうものが存在するのかよ、ワンちゃん。
王:うーん、技術だけで野球はできないし、IDという頭脳だけでもできないのは事実。この両方が揃って、初めて強い野球ができる。そういう意味では、持っている技術をどう生かすかということで、IDが必要になってくると思う。だけど、ノムさん(野村克也)のIDだけがズバ抜けているというんじゃないですよ。みんなもプレーの中で自然にやっているんですが、それを体系づけたのはノムさんの功績といえるんじゃないかな。
長嶋:野球というのは、一人じゃファインプレーやホームランは生まれない。相手があって初めて出るもの。みんなが昔からやっていたことだよね、ワンちゃん。
王:みんながやってきたことなんです。
長嶋:それをID野球というネーミングをして、それでマスコミの皆さんをうまく引っ張っていったということかな。
金田:サインを盗んでまでID野球をやることはないだろうとワシは思っとる。
王:確証のない話は言っちゃダメだからね、カネさん。
※週刊ポスト2025年6月20日号