侍の代表でもある森友哉は同級生。森も福森さんを支援している
病状は9回2アウト。それでも「最後に勝てばいい」
自分一人では何も解決ができない——現在の病状とも重なるところがあるだろう。周りの支えがあるからこそ、試練を乗り越えていく勇気も生まれた。
「大阪桐蔭では“最強であり続けなければならない”というプレッシャーと戦いながら、“日本一になるにはどうすべきか”と逆算しながら物事を捉えることを学びました。
野球で得た学びを活かしながら、ハウスメーカーに勤務していた時も契約を取るためにはどうすべきか考えていました。桐蔭の教えは仕事にも活用できるところがあったんですが、さすがに病気は逆算ができなかった。
3ヶ月前、大阪桐蔭の野球部部長に、『逆算できないから僕はこのまま死ぬんですかね?』と聞いたんです。
その答えが『今はボロボロでもひとまずは同点に追いついて、最後は勝て』と言われました。自分の場合、がんになってそれが別のところに転移して、今も進行し続けていて、どうすれば良いか分からない状況です。野球でいうなら9回2アウトで、ゲームセット直前。
でも、最後に病気に勝てばいい。部長からのアドバイスで、今の自分にとってのテーマは『最後に勝つ』。そう意識づけがはっきりしました」
福森さんが患っているのは、抗がん剤の効きづらいGIST(ジスト、消化管間質腫瘍)という「希少がん」。海外に目を向けた福森さんは、アバプリニチブとリプレチニブという抗がん剤がGISTの治療薬として評価されていると知った。2020年に米国で承認されたが、日本では未承認の抗がん剤だ。
「GISTの患者の会にも参加しましたが、『希少がん』なので日本の薬では効力がほとんどないようです。その現実を突きつけられると、みんな生きる希望を失ってしまうんです」
しかし、前述した2種類のGIST治療薬は保険適用外の自由診療。月に400〜500万円の費用がかかるという。ハウスメーカー勤務のサラリーマン(現在は休職中)では、非現実的な支払額だ。