争点になる「性交」をしたか、性交に「同意」があったか
依頼者が私の事務所へ来たのは、以前に身内がクライアントだったからだという。風体とトラブルの内容を聞いて思い出した。酔っぱらって、怖い人のベンツにゲロを吐き、さらに喧嘩を吹っかけてしまった男性。依頼者は、そのクライアントの従兄だった。
デリヘルなどの風俗店で本番(性交)をすることは売春防止法で禁止される「売春」に該当し、店舗側が本番を黙認しているような場合には売春の斡旋周旋にあたり、逮捕・摘発されることがある。すなわち、風俗店側からすれば本番は違法で、禁止される行為なのだ。
他方、禁止された本番行為を客が強要すれば、それは「不同意性交等罪」(この当時は2023年7月の刑法改正前だったので「強制性交等罪」だった)になる。
風俗での本番トラブルでは、【1】「性交」をしたか、【2】性交に「同意」があったか、この2つが争点になることが多い。今回、依頼者は【2】「同意」があったと主張して争っている。相手と話をする前に【1】「性交」の有無についても争うかどうか確認する。
「故意ではなかったにせよ、男性器が女性器に入ってしまった。これは事実ですか? それとも、その部分の事実関係も争いますか」
依頼者は「争わない」と言ったので、私はデリヘルのマネジャーに電話をかけた。数度のやりとりを経て、マネジャーとユウは、20万円で示談に応じた。
事態が妙な方向に動き始めたのは、それから半年ほど経った頃だった。「デリヘルで、本番トラブルを起こしてしまった」という相談がきたのだが、そのデリヘルというのが、沖縄の同じ店であるだけでなく、被害者とされる女性の源氏名もまったく同じ「ユウ」だったのである。
(第2回に続く)