「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏

「グラディアトル法律事務所」の代表弁護士・若林翔氏

「逮捕されませんか?」

「沖縄にいても不安でしょうし、東京に戻ってきたらどうですか」

 私は提案した。

「東京に戻りたいのですが、逃げた、という形にならないでしょうか。逮捕されませんか?」

「連絡が取れれば、東京に戻ってもらって大丈夫です。風俗での本番での逮捕事例もありますが、これまでの経験上、相手や警察としっかりと話ができている状況であれば逮捕されるリスクは高くないです。私が代理人となるご契約手続きが終わり次第、相手の店舗と警察にこちらから電話しますよ」

「それじゃあ、今すぐ契約してください。お願いします」

 契約手続きは電話とメールでも可能だ。しかし、この方は、すぐに東京に戻るので、事務所に来たいとのことだった。そこで事務所に来てもらって契約手続きとその後の方針の打ち合わせをすることにした。ここで、ふと浮かんだ。そもそも、相談者はどうやって私の存在を知ったのだろうか。

「掲示板に出ていたんです。この店とのトラブルを解決してくれたって」

 多くの依頼者は事務所のHPを見て連絡してくるので、これは珍しい。おそらく、過去のクライアントが書き込んだのだろう。そうだとすれば、書き込んだのは前回の依頼者である電気工事士に違いない。

 だが、それよりも、現役の官僚が風俗掲示板を見ているのみならず、そこに書かれた情報を信じてしまうという実態に興味を惹かれた。いや、相談者も冷静であれば、違う行動をとったのかもしれない。掲示板の書き込みにすら助けを求めたくなるほど追い込まれていたのだろう。

 さて、相談者が帰京するまで半日ほど時間がある。代理人になることはほぼ確実だが、この件をどうやって進めたものか。プロとしての勘は、被害を訴えた女性と店を強烈に怪しんでいるが、先方が強行犯係の刑事まで抱き込んでいるとなると、逮捕リスクを考慮して警察相手も含めて慎重に対応しなければならない。証拠不十分で起訴できないような事案でも、警察がむりやり逮捕し、実名報道されてしまうようなケースもあるからだ。問われるのは私たちの覚悟というより、相談者の覚悟だ。

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