推している「うたプリ」キャラクター誕生日の投稿。「うたプリも気づけば10年越しの推し 仕事で嫌な事があってもいつも癒しをありがとうございます」(田久保眞紀Instagramより)
「結構人気のある人だから辞任して出直せば再当選の可能性もあるよ。最初から嘘でした、ごめんなさいすればよかったのにね。結局そう(除籍)だったんだからね。もうこれ以上地元(伊東市)が笑いものにされるのは勘弁だよ」
田久保市長は伊豆高原のメガソーラー建設計画や40億円の新図書館建設を進めた当時の小野達也市長に異を唱える形で市長に当選した。自公推薦の現職市長と一騎打ちで1782票差の接戦だった。1970年生まれで趣味は大学を除籍になるほどに走り回ったバイクとアニメ、女性向けメディアミックス作品「うたプリ」こと『うたの☆プリンスさまっ』にハマってグッズを買い集めていることをインタビューでも明かしている。3年前の2022年にも「うたプリ」の舞台、軽井沢に聖地巡礼したいとXにポストしている。
「なんで卒業ってことにしてたのかね、あれさえなければよかったのに」
市議会議員時代も含め活動そのものは地元で評価されている田久保市長、学歴詐称に関する市議会の百条委員会設置の動きについて4日、〈いま百条委員会を開くことは、えー、伊東のためになるのか〉と述べているが、それこそこれまでの「東洋大学卒業したと思い込んで除籍」についての説明と、ちら見せ卒業証書が何だったのか実物を見せることが「伊東のためになる」と思うのだが。
伊東駅周辺はインバウンド客も多く、筆者が随分前に来たときの閑散としたかつての高度成長期の温泉街といった雰囲気からは様変わりしていた。やはり伊東市自慢の温泉と伊豆高原周辺は外国人にも好評のようで、伊東市そのものも18年連続の黒字(単年度収支)と赤字や財政不足に悩む地方自治体の中では優等生と言っていい。伊東温泉競輪も黒字、市の職員の努力と市民の地元愛あってこその成果だろう。
それなのに、除籍を東洋大学法学部卒業という〈勘違い〉(田久保市長談)によって伊東市そのものが笑いものになってしまった。今回の件で完全にもらい事故の東洋大学までSNSの一部から笑いものにされてかわいそう過ぎる。市にも地元民の抗議の電話が殺到しているということで、それこそ田久保市長自身が〈伊東のためになるのか〉と問われかねないと思うのだが。
あげく、ついには会見で泣いてしまった田久保市長、ついこの前まで「怪文書」に憤懣やる方ない様子だったはずなのに、泣きたいのは伊東市民および東洋大学関係者のほうである。市議会は4日に辞職勧告決議案提出を決定、「無責任」「卑劣な人物」と強い言葉で田久保市長を非難しているが、さすがにこの経緯と顛末では致し方なしといったところか。
新間正次経歴詐称事件やペパーダイン古賀、コロンビアサッチーと定期的に世を賑わす政治と選挙にまつわる学歴詐称問題。こうした過去の事例と同様、長期化しそうに思う。それにしても伊東市民および東洋大学関係者、本当にかわいそう過ぎる。
日野百草(ひの・ひゃくそう)/出版社勤務を経て、内外の社会問題や社会倫理、近現代史のルポルタージュを手掛ける。日本ペンクラブ広報委員会委員。
※一部敬称略