男女9人の遺体が見つかった、白石隆浩被告が住んでいたアパート(時事通信フォト)
和光大学の末木新(はじめ)教授は、NPO法人OVAが行っている、インターネット・ゲートキーパー(IG)事業に通じた研究を行っている。「死にたい」などと検索したネットユーザーを、ハイリスク者としてスクリーニングをする。「死にたい」など自殺を連想させるワードを検索すると、そのユーザーには「死にたくなったあなたへ」という特設サイトの広告が表示される。 特設サイトを訪れると、対人支援の専門職の相談員にメールで相談することができる。
相談や危機介入事業の結果、相談者の自殺希慮が低くなるのだろうか。データの収集期間は2018年~2019年。人数は167人。開始時と1か月後の自殺希慮/抑うつ・不安感を測定した。その結果、相談開始時より1か月後のほうが、自殺希慮/抑うつ・不安感が、統計的に有意に減少していた。しかし、効果量は小さいこともわかっている。
現状の、厚労省によるSNS相談事業は、効果検証をしていない。このままだとSNS相談事業は、何も効果検証がされないまま、進められていくことになる。現実には、10代の自殺者が増えている。これは、SOSを発する10代を含めた若年層が増えたにもかかわらず、話を聞くだけで、現実の問題を解決しないというケースが増えてしまっているのではないかと、筆者は心配であり、懸念をしている。
(了。第1回を読む)