先場所は東小結で6勝9敗と負け越した高安(時事通信フォト)
大相撲の「番付」は他のスポーツのように機械的に並べられたランキングではない。前場所の成績を考慮しているものの、そこには明確なルールがないのだ。相撲ジャーナリストが言う。
「横綱昇進についての内規にも『2場所連続優勝、あるいはそれに準ずる成績』と解釈の余地が残されており、過去には双羽黒のように優勝経験がないまま横綱に昇進したケースがある。大関は『3場所合計33勝』が目安となっているが、あくまでも目安。横綱や大関が不在ならハードルは低くなる。
その他の番付も同様。基本的には1つ勝ち越せば番付が1枚上がり、1つ負け越せば1枚下がるとされているが、下位で大きく勝ち越した力士と上位で負け越した力士を比べるのは難しいし、上位が揃って勝ち越せば下位で大きく勝ち越しても番付が上がらないケースがある。あとは協会の思惑も。そうして様々な事情によって決まるため“番付は生き物”とも言われている」
今場所の番付にも不可解な点があった。先場所、東小結で6勝9敗と負け越した高安が、半枚落ちただけの西小結に残ったのだ。1場所15日制となった1949年夏場所以降で初のケースだという。
先場所千秋楽の翌日のスポーツ紙に掲載された7月場所の予想番付では、全紙が高安を東前頭筆頭に予想していた。代わりに西小結と予想されていたのが、東前頭9枚目で11勝4敗だった安青錦。しかし、実際には高安が降格するであろうと予想されていた東前頭筆頭までの昇格でとどまった。若手親方が言う。
「最近は三役での負け越しの降格が抑えられ、下位力士の大勝ちは昇進が抑えられる傾向がある。とはいえ、高安は7勝8敗ではなく6勝9敗ですからね。しかも安青錦は優勝争いをしていたことで、琴櫻や大栄翔、若隆景など三役以上と対戦しており、三役に昇進してもよかった」
そう見られていたのに、“謎すぎる番付”となったのはなぜか。先場所は前頭筆頭から5枚目まで全員が負け越し。小結の候補となる6枚目以下の陣容に理由の一端がありそうだ。