和久井被告のSNSには、愛車との別れを惜しむ投稿が散見される
検察官からの質問の後には、被害者参加代理人弁護士からも質問があった。公判を通じて、検察官の後ろには遮蔽がなされており、おそらく遺族が裁判の様子を見届けていると思われる。この日の裁判まで、和久井被告からAさんに対する謝罪の言葉は出ていなかった。
被害者参加代理人弁護士が「拘置所内にいる時、手紙を送る気持ちはなかったのか」と問うと、和久井被告は「誰にですか?」と答えた。被告人は遺族に対する手紙を「考えたこともない」とし、慰謝料の考えも「金がないから考えていない」と、まるでふてくされているかのように突き放した。
裁判官からの質問に「悪いことをしたという気は持っている」と答えた被告人。しかし一方で、「気持ちの整理がついていない」とも答える。その真意を問われると、こう答えた。
被告人「大好きで、信用していた人に裏切られ、騙されて。ライブ配信で名前を出して悪口を言われて……。好きなこともできずに、ものすごいストレスがあったので」
この事件、命の次に大事だというバイクや車を売却し、消費者金融を何件も回ったこと、そして最終的にAさんに異常なほどに執着し、命を奪ったことは、全て被告人自身の選択で決定したことだ。そういった意思決定の“過ち”を自ら省みることができない限り、被告人の気持ちに整理がつくことはないのではないかと感じた。
7月14日、懲役15年の判決が言い渡された。和久井被告はいつ、自らの過ちと向き合うのだろうか。
(了。前編から読む)
◆取材・文/普通(傍聴ライター)