Aさんは和久井被告の他にも1億円以上の返金を求められていたと弁護側が証言
東京・新宿のタワーマンションの敷地内で2024年5月、元ガールズバー・キャバクラ店経営者の女性・Aさん(当時25歳)が刃物で刺され、殺害された事件。殺人などの罪に問われ起訴されていた配送業の和久井学被告(52)の裁判員裁判が結審し、7月14日には裁判官から「懲役15年」の判決が言い渡された。検察側からの求刑は17年だった。
弁護側はこれまでの公判で、「和久井被告がAさんから結婚をほのめかされた上で、お店の売上のためにお金を無心されていた」とし、懲役11年が妥当だと主張していた。判決では、Aさん側の“落ち度”は一部で認められた一方で、被告が殺人に至った経緯について、「(返金を求めるなら)法的手段で解決すべきだった」「殺人を正当化する理由にはならない」としており、怒りに任せた犯行が重く捉えられたと考えられる。
7月9日に開かれた第4回公判での検察官からの被告人質問では、和久井被告のAさんに対する異常なほどの“執着”が浮き彫りになっていた。検察官が法廷で反省の意があるか問うと、被告人は予想外の言葉を発したのだった——傍聴したライターの普通氏がレポートする。【前後編の後編。前編から読む】
「『バイバイ』の言い方が優しくなって…」
検察官は、事件に至るまでの経緯を確認した。和久井被告は、Aさんが経営するガールズバーに4か月間で13回通い、合計139万円を使った。使用した日時と金額を、被告は毎回メモしていたという。通っていた理由として「仲が良かったので応援したい気持ちで」と供述したが、そのころの被告人の収入は20万円前後だったので、応援の域を超えているのは明らかであった。
Aさんがガールズバーを畳んだ後に開店したキャバクラ店では、シャンパンタワーの前金として1600万円と、加えて約230万円を支払っていた。プライベートで現金を渡すことはなかったというが、飲みに行く際などは安価なものでもプレゼントを持参し、手ぶらで行くことはなかったという。
弁護側からは、和久井被告の債務が900万円を超えているという証拠が示された。被告人質問でも、和久井被告がシャンパンタワーのために金策に駆け回った様子も供述されていた。しかし、そのうちAさんに支払うために背負った債務は300万~400万円であると被告人自身も語り、残りは元々の自分の金遣いの荒さからの債務であることも判明した。
ガールズバーの閉店後、被告人が告白すると、Aさんは「プラトニックな関係なら」という条件付きでOKしたという。当時の様子についても、検察官は聞いた。