白石隆浩死刑囚が使ったSNSアカウント
「SNSで知り合って家に連れ込むのが得意だった」
2020年の裁判員裁判に現われた白石死刑囚は、ややがっちりした体型に官品らしき黄緑色の作業服を着用し、肩甲骨あたりまで伸びたボサボサのロングヘア、メガネにマスクという姿だったが、立川拘置所での面会取材に応じていた2018年当時は、痩せた体にカルバンクラインの黒いトレーナーに黒いズボンという小綺麗な出で立ちだった。
取材者に対して愛想が良く、躊躇なく事件について語る様子が印象的だった。女性の被害者に対しては失神させたうえで性的暴行を加えていたが、これに「快楽を覚えました」(面会での白石死刑囚の発言。以下「」内同)という。それまで、こうした性的暴行に及んだことはなかったが「悪いことしているというスリル」にのめり込んだ。約2か月という短期間で9人もの殺害を敢行するほどに。
白石死刑囚にとって犯行はこうした性的快楽を満たすためのものであると同時に、“カネを得るため”の手段でもあった。むしろ当初はそれが動機だった。
「TwitterとかSNSで、『さみしい』とか『死にたい』とか『彼氏欲しい』とか、そんなことを書いている方々を探していました。悩みを聞いたり口説いたり。少しでも会いたくなるようにしていました。
知り合って、話を聞く中でお金があるか確かめて、金があればそれを引っ張るのが最優先です。貯金や収入があるとなれば、口説いて引っ張る。ダメなら、金を奪って強引な性行為をしてから殺害します」
しかし、そもそも金銭目的のはずであるにもかかわらず、空き巣などを選択肢に入れた気配がなかったのは、どういうことか。そう問うと、白石死刑囚は答えた。
「単純に経験が一切なく、スキルがなくてできなかった。やろうと思わなかったです」
とはいえ、人を殺すことも、経験がないはずだ。なぜ未経験の窃盗と殺人のうち、後者を選んだのか。
「SNSで知り合って家に連れ込むのが得意というか、好きでそれをやってたんで、最初は口説いて金引っ張ろうと思ったのがスタートです」
後編では、犯行にあたって白石死刑囚が考えていた“恐怖のフローチャート”についてお伝えする。
(後編に続く)
◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)