独特のノウハウが必要で、経験者に頼ることも多い炊き出しボランティア(写真提供/イメージマート)
炊き出しのたびに高圧的に寄付を募る
以前、筆者が埼玉県内にある「貧困ビジネス」施設を取材したとき、話を聞いた施設入居者の高齢男性も「新宿の公園の炊き出しで誘われた」などと証言していた。当時の炊き出しは、全く別の慈善団体が行なっていたものであり、そこに乗じた部外者による勧誘の可能性は高かった。だが最近は、炊き出し自体が、反社会的な組織のビジネスに利用されつつあるという。前出のカメラマンが続ける。
「タコ部屋の話は私も知っています。土木工事関係の人たちが、炊き出しに並ぶ若者をスカウトに来たり、あと、闇バイト要員に連れて行かれた人もいて、炊き出し主催者の半グレの家に警察が入ったこともあります。また、ごく一部ですが、炊き出しが”シノギ化”していて、炊き出しの度に個人や事業者に寄付を寄越せと、後輩だけでなく地域住民にも高圧的にくるわけです。
また、協賛や寄付を渋ると、不良コミュニティからハブられる可能性があって、そうなると、地域の取り組みや、まっとうな仕事などでのつきあいもある人たちが相手だから、地元で生きづらくなるかもしれない。だから納得はできないけど、炊き出しの度にみかじめ料的に金銭や物品による支援をせざるを得ない。昔は防災の日とか年末とか節目のときだけだったと思うのですが、最近は回数を増やしている団体が目立つ。それだけ社会が貧しくなっているのかもしれないけれど、本当にボランティアのためなのか?と色々と疑問を声を聞くことも多いです」(雑誌カメラマン)
とはいえ、こうした活動に参加している人々のほとんどは、こんな邪な思いを抱いているわけがない。だが、たくさんの善意の心がある場所こそ、悪にとっては都合が良い。ヤンキーやー不良といったレッテルを物ともせずボランティアに勤しむ立派な人々の多くの良心が、ごくごく一部の不届者のせいで否定されるようなことがあっては残念だ。