エレナ(31)の仕事場へ案内された
彼女らを追いやった“浄化作戦”
フランスでは2016年に売春規制法が成立し、買春行為を行った者に罰則が科されるようになった。パリ五輪を前に、“浄化作戦”によって売春婦たちは市中心部から姿を消した。しかしそれは“解決”ではなく、不可視な場所への“移動”を意味している。「今の法律は、私たちを守ってくれているとは思えない。むしろ、もっと隠れた場所に追いやられているだけ」とエレナは語った。
「あなたは、もう帰ったほうがいい。夜になると、いろんな人が来るから」
あたりが暗くなってきた頃、エレナはそう言い、軽く手を振った。別れ際、何度も「持っているバッグに気をつけて」と記者を気遣う姿が印象的だった。
「あなたのこれからの人生が輝かしいものになることを祈っています」
そうスペイン語で伝えると、エレナは記者をそっとハグした。その表情は明るさを保っていたが、その奥にあるものまでは見えなかった。