子どもを二の次にするような母親でも警察は「しっかり仕事をやりました」(写真提供/イメージマート)
本音では、こんな母親は守りたくない
「このままでは殺されるかもしれない」と、女は隙を見て逃げ出し警察署に駆け込んだ。ここで初めて被害届を提出する。「保護要請となり、警察に保護されることとなった。置きざりにされていた子供たちも保護され、出張していた父親が戻り引き取った。幼い子供たちにそそがれるはずだった愛情を男に注いだ挙句、監禁暴行を受け、母親も自分の愚かさにようやく気が付いたと思ったんですが…」とO氏は肩をすくめる。
保護した警察署でO氏は女に、「『お母さん、もういい加減にしなさい』と一喝したんです。待っている子供たちもいる、男ときっちり別れてやり直しなさいというと、『私は母である前に女なんです』といわれてね。一生懸命やっていた我々は口があんぐり。開いた口がふさがりませんでした」という。
警察署では、その場では反省の色を見せる者がほとんどというが、この母親は違った。子供の家庭教師として来ていた大学生とできてしまい、子供を捨てて2人で逃避行した母親が、夫と離婚する時に同じようなことを言ったというのを聞いたことがあるが、警察に助けを求めて駆け込み、保護してくれた刑事に対してそう言えるというのは、O氏にとっても驚きでしかなかったのだろう。「本音では、子供を二の次にするようなこんな母親は守りたくありません。けれど、やらなければ警察は何もしてくれなかったと非難されます」。
そんな母親でも子供にとっては大切な唯一無二の存在だ。子供のためを思い「感情的にはやりきれませんでしたが、それでも被害者なら守るのが我々の仕事です。しっかり仕事をやりました」と語ったO氏。その後、女は被害届を取り下げ、男と示談が成立したという。