『ちはやふる―めぐり―』主演は18歳の當真あみが務める(公式HPより)
いかに「夏らしさ」を感じてもらうか
その背景にあるのは、学園ドラマを取り巻く状況の変化。
今年1月期に松坂桃李さん主演『御上先生』(TBS系)が放送されましたが、同作は高校が舞台の物語であるにもかかわらず、これまでの学園ドラマを覆すような脚本・演出が話題になりました。
主人公は文科省のエリート官僚から出向した教師。だからこそこれまでにない視点から教育現場の問題に斬り込んでいく姿が描かれましたが、なかでも同じTBSで放送された『3年B組金八先生』を否定するようなセリフは大きな反響を呼びました。
つまり、「かつてヒットしたような教師が主人公のドラマでは成立しづらくなっている」ということ。だから今夏はスクールロイヤーと法律をフィーチャーした『僕達はまだその星の校則を知らない』が制作されるなど、このところ制作サイドの工夫が求められるようになっています。
さらに『ちはやふる―めぐり―』を見ると、もう1つのヒットパターンだった「“生徒が主役の部活ドラマ”も通常の仕掛けだけではヒットが難しくなった」という現状がうかがえました。前述した『WATER BOYS』『がんばっていきまっしょい』『表参道高校合唱部!』のような王道の部活ドラマにも大型プロジェクトのスケール感が求められるようになったという背景が垣間見えます。
また、『愛の、がっこう。』のように「学校を舞台にすることで、作品に夏ドラマらしさを加え、子どもたちに見てもらいやすくする」という事実上のサブ扱いも学園ドラマを取り巻く変化の1つでしょう。
『明日はもっと、いい日になる』の児童相談所は海辺にあり、『僕達はまだその星の校則を知らない』は夏の夜空のシーンが織り込まれるなど、制作サイドは視聴者に夏という季節を感じて楽しんでもらおうという工夫を重ねています。王道の学園ドラマに留まらず描き方が多様化してきただけに、好みのものを選んで見やすくなったと言えるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。