巨人で新人王に輝き、引退後には投手コーチを務めた関本四十四氏
1964年に入団し、タレント揃いの巨人にあって内野の4ポジションすべてを守るユーティリティプレーヤーとしてチームを下支えした上田武司氏。長嶋氏と三遊間を守った時は、驚きの連続だったと振り返った。
「長嶋さんは足が速いバッターが打席に入ると、わざとベースより後ろに守備位置を下げてじっとしているんです。ベンチから“もっと前に出ろ”と指示があっても、まったく無視です。だがピッチャーが投球を始めると、同時に猛ダッシュをする。バッターがセーフティバントしたボールを捕球して素早く一塁へ送球してアウト。スタンドは拍手喝采です。長嶋さんはどうやればお客さんが喜ぶか、そればかり考えてプレーしていたんじゃないでしょうか。普通ならエラーしたくないと緊張して、そんな余裕はありませんよ」
※『巨人V9の真実』(小学館新書)より一部抜粋・再構成
【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。著書に8競技のベテラン審判員の証言を集めた『審判はつらいよ』(小学館新書)などがある。新著『巨人V9の真実』には、長嶋茂雄氏、王貞治氏、金田正一氏らの貴重な証言の数々が収録されている。