国際情報

中国海軍潜水艦士官学校、創立72年で初の女性士官候補生を採用 原子力潜水艦の配備が進み人材養成が急務に

女性登用の背景とは(習近平氏。写真=中国通信/時事通信フォト)

女性登用の背景とは(習近平氏。写真=中国通信/時事通信フォト)

 中国海軍潜水艦要員の最高訓練機関である中国人民解放軍海軍潜水艦士官学校は今年、1953年の創立以降初めて女性の士官候補生10人を採用した。同校は昨年まで女性の入学を許可していなかった。

 中国海軍は2022年、初めて女性の軍艦艦長を任命したほか、2023年には航空母艦の艦載機のパイロットの採用試験でも初めて女性の募集を開始しており、徐々に女性に門戸を開放している。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。

 潜水艦士官学校は山東省青島市にあり、中国海軍潜水艦部隊の人材育成に専念する高等訓練機関だ。

 中国国営の中央テレビ局によると、同校についてはほとんど情報公開されておらず、「中国で最も秘密主義な軍事士官学校」として知られている。これは主として沿岸防衛や敵船監視、封鎖突破など、極秘任務を担う潜水艦運用上の特性によるものだという。

 潜水艦部隊の任務は1980年代までは主に中国の沿海部を小型潜水艦で哨戒する沿岸防衛が主だったが、1990年までには大型の原子力潜水艦5隻が就役するなど、徐々に南シナ海などの外洋に進出。2006年にはロシアの技術援助を受けて、排水量6000トン、水中速力30ノットの攻撃原潜「商」型が就役し、航続距離や攻撃能力も大幅向上している。近年ではさらに新世代原子力潜水艦「晋」型シリーズも配備されるなど、人材の養成が急務となっていることも女性登用の大きな理由とされる。

 同校の生徒たちは複雑化する潜水艦の操作技術を取得するために、厳しい訓練を受けており、たとえば、ソナーのオペレーターは、季節変動する海温下で多種多様な船舶音響信号を識別する能力を求められる。

 また、潜水艦乗組員は、ダメージコントロールや緊急脱出などのスキルを習得する必要があり、毎日の訓練では、水中脱出時の物理的圧力を体験するなど、深水プールでの潜水訓練など厳しい課題をこなしている。

 過酷な訓練が必要となることもあってか、世界各国の海軍のなかでも、潜水艦で勤務する女性は少ないという。

 中国人民解放軍機関紙「解放軍報」によると、潜水艦の戦力では世界一といわれる米海軍でも、現在712人の女性が潜水艦に配属されているが、これは1万5000人以上の全艦隊の5%弱にすぎない。中国海軍の女性の潜水艦要員はいまのところ、今年入隊した10人だけであり今後拡大余地もあるとみられる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
国仲涼子が語る“46歳の現在地”とは
【朝ドラ『ちゅらさん』から24年】国仲涼子が語る“46歳の現在地”「しわだって、それは増えます」 肩肘張らない考え方ができる転機になった子育てと出会い
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン
インフルエンサーの景井ひなが愛犬を巡り裁判トラブルを抱えていた(Instagramより)
《「愛犬・もち太くん」はどっちの子?》フォロワー1000万人TikToker 景井ひなが”元同居人“と“裁判トラブル”、法廷では「毎日モラハラを受けた」という主張も
NEWSポストセブン
兵庫県知事選挙が告示され、第一声を上げる政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏。2024年10月31日(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志容疑者、14年前”無名”の取材者として会見に姿を見せていた「変わった人が来るらしい」と噂に マイクを持って語ったこと
NEWSポストセブン
千葉ロッテの新監督に就任したサブロー氏(時事通信フォト)
ロッテ新監督・サブロー氏を支える『1ヶ月1万円生活』で脚光浴びた元アイドル妻の“茶髪美白”の現在
NEWSポストセブン
ロサンゼルスから帰国したKing&Princeの永瀬廉
《寒いのに素足にサンダルで…》キンプリ・永瀬廉、“全身ブラック”姿で羽田空港に降り立ち周囲騒然【紅白出場へ】
NEWSポストセブン
騒動から約2ヶ月が経過
《「もう二度と行かねえ」投稿から2ヶ月》埼玉県の人気ラーメン店が“炎上”…店主が明かした投稿者A氏への“本音”と現在「客足は変わっていません」
NEWSポストセブン
自宅前には花が手向けられていた(本人のインスタグラムより)
「『子どもは旦那さんに任せましょう』と警察から言われたと…」車椅子インフルエンサー・鈴木沙月容疑者の知人が明かした「犯行前日のSOS」とは《親権めぐり0歳児刺殺》
NEWSポストセブン
10月31日、イベントに参加していた小栗旬
深夜の港区に“とんでもないヒゲの山田孝之”が…イベント打ち上げで小栗旬、三浦翔平らに囲まれた意外な「最年少女性」の存在《「赤西軍団」の一部が集結》
NEWSポストセブン
スシローで起きたある配信者の迷惑行為が問題視されている(HP/読者提供)
《全身タトゥー男がガリ直食い》迷惑配信でスシローに警察が出動 運営元は「警察にご相談したことも事実です」
NEWSポストセブン
「武蔵陵墓地」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月10日、JMPA)
《初の外国公式訪問を報告》愛子さまの参拝スタイルは美智子さまから“受け継がれた”エレガントなケープデザイン スタンドカラーでシャープな印象に
NEWSポストセブン