女性登用の背景とは(習近平氏。写真=中国通信/時事通信フォト)
中国海軍潜水艦要員の最高訓練機関である中国人民解放軍海軍潜水艦士官学校は今年、1953年の創立以降初めて女性の士官候補生10人を採用した。同校は昨年まで女性の入学を許可していなかった。
中国海軍は2022年、初めて女性の軍艦艦長を任命したほか、2023年には航空母艦の艦載機のパイロットの採用試験でも初めて女性の募集を開始しており、徐々に女性に門戸を開放している。香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が報じた。
潜水艦士官学校は山東省青島市にあり、中国海軍潜水艦部隊の人材育成に専念する高等訓練機関だ。
中国国営の中央テレビ局によると、同校についてはほとんど情報公開されておらず、「中国で最も秘密主義な軍事士官学校」として知られている。これは主として沿岸防衛や敵船監視、封鎖突破など、極秘任務を担う潜水艦運用上の特性によるものだという。
潜水艦部隊の任務は1980年代までは主に中国の沿海部を小型潜水艦で哨戒する沿岸防衛が主だったが、1990年までには大型の原子力潜水艦5隻が就役するなど、徐々に南シナ海などの外洋に進出。2006年にはロシアの技術援助を受けて、排水量6000トン、水中速力30ノットの攻撃原潜「商」型が就役し、航続距離や攻撃能力も大幅向上している。近年ではさらに新世代原子力潜水艦「晋」型シリーズも配備されるなど、人材の養成が急務となっていることも女性登用の大きな理由とされる。
同校の生徒たちは複雑化する潜水艦の操作技術を取得するために、厳しい訓練を受けており、たとえば、ソナーのオペレーターは、季節変動する海温下で多種多様な船舶音響信号を識別する能力を求められる。
また、潜水艦乗組員は、ダメージコントロールや緊急脱出などのスキルを習得する必要があり、毎日の訓練では、水中脱出時の物理的圧力を体験するなど、深水プールでの潜水訓練など厳しい課題をこなしている。
過酷な訓練が必要となることもあってか、世界各国の海軍のなかでも、潜水艦で勤務する女性は少ないという。
中国人民解放軍機関紙「解放軍報」によると、潜水艦の戦力では世界一といわれる米海軍でも、現在712人の女性が潜水艦に配属されているが、これは1万5000人以上の全艦隊の5%弱にすぎない。中国海軍の女性の潜水艦要員はいまのところ、今年入隊した10人だけであり今後拡大余地もあるとみられる。