スポーツ

《巨人V9の真実》王貞治氏、広岡達朗氏、堀内恒夫氏ら元同僚が証言する“長嶋茂雄の勇姿”「チームの叱られ役だった」

ノックでも観客を沸かせた長嶋茂雄氏(写真/AFLO)

ノックでも観客を沸かせた長嶋茂雄氏(写真/AFLO)

 プロ野球史に燦然と輝く記録が「巨人の9年連続日本一」だ。その中心には背番号「3」、長嶋茂雄さんの勇姿があった。生前のミスターへのロングインタビューを含む貴重な証言をまとめた新刊『巨人V9の真実』(小学館新書)を上梓したジャーナリスト・鵜飼克郎氏がレポートする。

 * * *
 川上哲治監督率いる巨人軍による1965年からの「V9」は、まさに“不滅の記録”である。

 拙著では、6月3日に89年の生涯を閉じた長嶋氏、ONコンビで主軸を張った王貞治氏、国鉄から移籍して400勝を達成した金田正一氏らV9戦士たち、そして巨人の連覇を阻止せんと挑んだ吉田義男氏、野村克也氏らライバルたちに、当時の話を取材した。証言者たちは揃って、長嶋氏の話題になると言葉に熱を込めた。あの時代の中心に背番号「3」がいたことの何よりの証左だろう。

 取材のなかで、長嶋氏が当時のチームの“叱られ役”だったと振り返ったのは、王氏だった。自身は川上監督から叱られた記憶がないのだという。

「言ってみれば長嶋さんが長男で、僕は次男坊なんです。だから川上さんは長嶋さんを叱っていました。長嶋さんを叱れば他の選手にも伝わり、チームが引き締められるという考えがあったからでしょう。長嶋さんも分かっていたんじゃないかな。ただ、長嶋さんは何を言われても、そんなの関係ないというぐらい自分の世界で野球をやっていましたね」

 同様の証言は、エース番号「18」を背負った“悪太郎”こと堀内恒夫氏もしている。川上監督が長嶋氏を怒鳴りつけるシーンをこう振り返っていた。

「ベンチに帰ってきた長嶋さんが“今日は打てないなぁ”と漏らすと、川上監督が猛然と怒った。“お前は日本一のチームでプレーして、日本一の給料をもらっているじゃないか。そのお前が打てないと言えば、他の者も打てないじゃないか”と。

 チームの士気にかかわるのだから、責任を持てということでしょう。ベンチ内はシーンとなりましたが、叱られてた長嶋さんもさるもの。次の打席でホームランを打って、試合後のインタビューでは“川上監督に激励された”と答えていました」

 川上監督にとって長嶋氏は単に打線の中軸を担う選手ではなく、チームの舵取りに欠かせない存在だったことが窺える。

 実際、長嶋氏の天性の明るさ、そして野球と真摯に向き合う姿勢がチーム全体の士気を上げたとするエピソードは多い。長嶋氏と三遊間を守り、「黒タンク」の愛称で親しまれた黒江透修氏は、遠征先の旅館での素振り練習についてこう話した。

「チョーさんは試合で3タコだったりすると不機嫌になり、部屋へ帰ってから練習になる。チョーさんはユニフォームを脱いで素っ裸になり、“土井(正三)、襖外せ! 黒ちゃん、バット持て!”といって練習開始。土井が襖を水平に支え、僕がバットのグリップエンドで球筋の位置を示す。それを目標にしてチョーさんがフルチン姿でバットをブンブン振りまくる。僕らはパンツ1枚でお手伝いしていました」

 そうした姿を目の当たりにした黒江氏は「ONがこれだけやるんだから、僕もやらなくちゃいけない」と感じたのだという。

関連記事

トピックス

釜本邦茂さん
追悼 釜本邦茂さんが語っていた“理想の最期” 自身の両親のように「誰にも迷惑をかけず逝きたい」と話し、「葬儀ではマツケンサンバを」と笑顔で語る一幕も
NEWSポストセブン
雅子さまのご静養に同行する愛子さま(2025年8月、静岡県下田市。撮影/JMPA) 
愛子さま、雅子さまのご静養にすべて同行する“熱情” そばに寄り添う“幼なじみ”は大手造船会社のご子息、両陛下からも全幅の信頼 
女性セブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴行動画に批判殺到の花井組》社長らが書類送検で会社の今後は…元従業員は「解体に向けて準備中」、会長は「解体とは決まっていない。結果が出てくれば、いずれわかる」と回答
NEWSポストセブン
ベッド上で「あー!」
《大谷翔平選手の“アンチ”が激白》「すべてのアンチに、アンチとしての覚悟を持ってほしい」地獄の応援芸・740km超えマラソンでたどり着いた“アンチの矜持”
NEWSポストセブン
猫愛に溢れるマルタでは、動物保護団体や市民による抗議活動が続いているという(左・時事通信フォト)
《深夜に猫地面にたたきつける動画》マルタで“猫殺し”容疑で逮捕の慶應卒エリート・オカムラサトシ容疑者の凶行と、マルタ国民の怒号「恥を知れ」「国外に追放せよ」
NEWSポストセブン
大神いずみアナ(右)と馬場典子アナが“長嶋茂雄さんの思い出”を語り合う
大神いずみアナ&馬場典子アナが語る“長嶋茂雄さんの思い出”「こちらが答えて欲しそうなことを察して話してくれる」超一流の受け答え
週刊ポスト
夜逃げした「郷土料理 たち川」に、食品偽装があったという(左はinstagramより、右は従業員提供)
「飛騨牛はホルスタイン、天然鮎は養殖モノ…」岐阜・池田温泉、町が委託したレストランで“食品偽装疑惑”「仕入れ先が減り、オーナー自らスーパーで割引の商品を…」【7月末に夜逃げしていた】
NEWSポストセブン
痩せる前のエヴィヤタルさん(インスタグラムより)
「弟はもはやガイコツ」「この穴は僕が埋葬される場所だろう」…ハマスが“人質が自分の墓を掘る”動画を公開し世界各国から非難噴出《飲まず食わずで深刻な飢餓状態》
NEWSポストセブン
本州に生息するツキノワグマ。体長120~180センチほど。最近では獣害の被害が増えている(イメージ)
《襲われる被害が多発》クマに悩まされる養蜂家たちが告白 「今年はあきらめるしかない…」「槍を作って山に入るヤツもいる」
NEWSポストセブン
デコラファッションで小学校に登校していたいちかさん、中学生となり衝撃の変貌を遂げていた…!
《デコラ小学生が衝撃の変貌》グリーン&ゴールド髪が“黒髪少女”に大転身「ほぼスッピンのナチュラルメイクで中学に登校する」意外な理由とは
NEWSポストセブン
昨年に第一子が誕生したお笑いコンビ「ティモンディ」の高岸宏行、妻・沢井美優(右・Xより)
《渋谷で目立ちすぎ…!》オレンジ色のサングラスをかけて…ティモンディ・高岸、“家族サービス”でも全身オレンジの幸せオーラ
NEWSポストセブン
「池田温泉」は旅館事業者の“夜逃げ”をどう捉えるのか(左は池田温泉HPより、右は夜逃げするオーナー・A氏)
「支払われないまま夜逃げされた」突如閉鎖した岐阜・池田温泉旅館、仕入れ先の生産者が嘆きの声…従業員が告発する実情「机上に請求書の山が…」
NEWSポストセブン