『ビッグコミックオリジナル』で連載中の『大市民 がん闘病記』
「なるようにしかならない」
まさに青天の霹靂。がんになったという衝撃の現実を前に柳沢氏は何を思い、どう対峙したのか?
「診断が下っても、実感は湧かないままでしたね。“まあなったのは仕方ない”というような諦めの気分でしょうか。そして、この先俺はどうなるのだろうかと、やはりボーゼンとするばかりで。でも、“ああ、あの時こうしときゃ良かったな……”という後悔は全くないですね。
自分の人生、バカの繰り返しでしたが、十分に生きたいように生きたので、10年ほど前から、いつ死んでもいいという心境になっていましたので、『なるようにしかならない』と淡々と生きています。ただ、できれば痛みで苦しんだりとかは避けたいですね(笑)」
『大市民 がん闘病記』の連載が始まったのは今年の3月。作品本編で明示はされていないが、今回の柳沢氏本人の闘病経験が色濃く反映されているという。
「長い付き合いの元編集者が、私のがん闘病をテーマに漫画を描くことを勧めてくれたんです。その人からの紹介で、『ビッグコミックオリジナル』の編集長と会い、連載を始めることになりました。しかし最初は描くにあたり少し抵抗感がありまして、正直今でも、辛い体験を基に『大市民 がん闘病記』を描くのは『なんだかなァ』とウンザリしながらってところもあります(笑)。この歳になっても仕事があるというのは幸せだと思いますが、今、連載が3本あって月産160ページにもなり、もう少しユックリと生きたいなぁとも思います。でも、じゃあ仕事が全く無い生活はどうかと考えると、それはやはり寂しいんですよね(笑)。
実際にこの連載を描いて色々感じるのは、76歳という高齢者になってしまった自分についてです。例えば『まだ生きている意味があるのだろうか?』とか。そして、手も少し震えるようになり、ペン入れもいつまでできるのかとの不安の中で仕事をしています」