大阪といえばたこ焼き
平成・令和の関西弁キャラクターの特徴
古典的な関西弁キャラでは、厚かましく、下品で、金や食べ物にきたない、垢抜けないおじさん・おばさんキャラ、あるいは若くても年寄り臭いキャラが目立っていた。異物感の強い、どぎついキャラクターであったが、平成・令和の関西弁キャラは、すっきりとした見た目の人物が多く、主人公と張り合って人気を得るようなタイプも増えてきている。
ただし、鈴原トウジのような屈折したキャラクターのようなかつての古典的な関西弁キャラがいることも見逃せない。つまり、関西弁キャラのヴァリエーションが広がったということである。
ではなぜ、これらのキャラクターは関西弁を話すのだろうか。一つには、主人公が標準語を話す一方で、それに張り合う強いキャラを造形するのに、関西弁のインパクトが役に立つということがあるだろう。
さらに言えば、関西弁キャラは間違いなく多弁である。「不言実行」タイプの関西弁キャラ、というのは意味がないのである。
よくしゃべる登場人物は、状況を事細かに分析し、説明してくれる。これは作者にとって大変ありがたいのである。関西人(ことに大阪人)は、言語コミュニケーション能力に秀でているというのが昨今の関西人のステレオタイプの一つであるが、これは創作者にとっては便利なキャラクターとなってくれるのだ。
このようなキャラクターの変容の要因については、先に引いた後藤氏の論文で述べられているように、1980年の「マンザイ・ブーム」の影響が大きいことは確かである。さらにその背景には、団塊ジュニア世代に先導された、日本人のコミュニケーションスタイルの変容があるようである。
言語コミュニケーションによって積極的に他者に関わっていくことを是とする、ポストモダン的な価値観の確立によって、大阪的なコミュニケーションが日本語話者に肯定的に受け入れられるように変わってきたとすると、そういった世相を反映して、関西弁キャラも変わってきたということになる。
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