街の人が2人のフルネーム漢字で書けたらロケ終了という企画にて「かまいたちの知らんけど」公式Xより

街の人が2人のフルネーム漢字で書けたらロケ終了という企画にて「かまいたちの知らんけど」公式Xより

・2021年~2024年──流行語ランキング入り続く

 2021年には、「かまいたちの知らんけど」というバラエティ番組が放送され、2022年にはジャニーズWEST(現在のWEST.)が「しらんけど」という楽曲を発表した。こういった出来事に後押しされたか、2021年「@DIME」10代女子が日常生活で使っている流行語トップ3で、「知らんけど」が2位にランクインした。

 そして2022年、ユーキャン新語・流行語大賞で「知らんけど」がトップ10入りし、2024年には、ギャル流行語に関するアンケートを基にしたegg 流行語大賞2024の3位にランクインした。

 このように、「知らんけど」はまずネットユーザーによって見いだされ、ネット社会の中で反響を広げていくうちに、大手メディアの感知するところとなり、ネットを飛び出して国民的な流行語へと広がっていったという過程があったことが分かる。

 ネットでまず広まった理由の一つには、それが文字による「打ちことば」の表現であったことが挙げられる。文字であるからこそ、関西アクセントの難しい発音を回避できたことで、若い世代へ波及したのだと思われる(田中ゆかり『「方言コスプレ」の時代』)。

「知らんけど」はなぜ受けるか

 そもそも、「知らんけど」は関西人が特に気にすることなく、日常的に使っていた表現である。もともとは柴崎友香氏の書名にもあるように、「よう知らんけど」というフレーズがあって、それが縮約されて「知らんけど」になったのである。「私、よく知らないんだけど、~らしいよ」といった話し方は特に関西人でなくても使う言い回しではないだろうか。

 ただ、その使用頻度が関西人は特に高く、また言いたいことを言ったあとで「知らんけど」と付け足す感じが標準語や他所の方言にはなく、この語順(本文を言ったあとで付け足す)が特に人を食ったような、不遜な態度を聞き手に感じさせるのである。

 関西人といえど、まったく知らないことを口から出任せに言っているわけではない。しかし、関西外の人には、まずそのような印象を与えてしまうので、驚きや戸惑いの気持ちとともにワードとして切り取られ、ネットを起点として話題化していったわけだ。

 なぜ関西人がこのフレーズを好むかと言えば、「正しく話す」か、「楽しく話す」かの比率のバランスが他所(よそ)と異なるせいであろう。「○○(かもしれない)」という話題が、今展開されている会話の場に投入されれば、もっと場が盛り上がるだろうと思うと、関西人は多少の信憑性を犠牲にしても、発話してしまうのである。「知らんけど」が「ん」を含む、リズミカルなフレーズであることも重要である。

 この「正しさ」に対する軽いノリが、全国的に容認されつつあるが故に、「知らんけど」が流行語化したということなのだ。

(了。第1回を読む)

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