国内

昭和の「関西弁キャラ」は女性にモテないタイプ? 『パーマン』『あしたのジョー』『いなかっぺ大将』を日本語学者が分析してわかった“古典的イメージの源流”

通天閣

大阪のシンボル・通天閣

 漫画やアニメで登場する機会が多い関西弁キャラたち。「話好き」「食通」といった特徴で描かれることも多いが、あなたはどのようなイメージを持っているのだろうか。大阪出身の日本語学者の金水敏氏は「7つの性質」を挙げ、大阪弁へのイメージは「一度に生じたものではなく、歴史的に波状的に形成された」と指摘する。

 では、具体的にはどのような特徴なのか。昭和時代の漫画に登場する“典型的な関西弁キャラ”から見えた共通点とは──。

 金水氏の著書『大阪ことばの謎』(SBクリエイティブ)から、関西弁キャラの持つ性質についてお届けする。(同書より一部抜粋して再構成)【全3回の第1回】

 * * *
 私はかつて『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』を著し、その後も「役割語」に関連する著作を公刊してきた。

 役割語とは、主にフィクションの中で、話者のキャラクター(属性)に応じてある程度決まってくる話し方のスタイルのことである。たとえば、「そうじゃ、わしが知っておるんじゃ」と言えば老人、「そうですわよ、わたくしが存じておりますわよ」と言えばお嬢様、といった具合である。そして、方言的な表現も時に役割語となる。大阪弁・関西弁キャラがその典型である。

『ヴァーチャル日本語 役割語の謎』では、関西弁キャラが往々にして持つ性質を次のように整理した。

1 冗談好き、笑わせ好き、おしゃべり好き
2 けち、守銭奴、拝金主義者
3 食通、食いしん坊
4 派手好き
5 好色、下品
6 ど根性(逆境に強く、エネルギッシュにそれを乗り越えていく)
7 やくざ、暴力団、恐い

 これらの性質は、一度に生じたものではなく、歴史的に波状的に形成されたと旧著では考えている。すなわち、1~4までは江戸時代の上方文化(特に大坂=大阪の文化)に由来するもので、江戸の人たちから見た場合、商都大阪からやって来る人々は話し好きで、商売上手であり、食べ物や服飾等の現世的な快楽を素直に肯定する傾向が強かったところから生じたステレオタイプであったであろう。

 これに対し、5の性質は、井原西鶴の「好色もの」など、江戸時代に萌芽はあったが、今日に繋がる作品としては今東光や野坂昭如の作品が強い影響を与えたかもしれない。

 また6に関しては、例えば織田作之助「夫婦善哉」の主人公・柳吉は、ど根性とは対極の人物であり、大阪人のステレオタイプとは言えない。おそらくは、花登筐この「根性もの」が強い影響を与えたものだが、花登筐はむしろ近江商人の気質を念頭に作品を書いていたようである。

 最後の7は、江戸時代には上方者は柔弱と捉えられており、むしろけんかっ早い江戸っ子の対極と思われていたフシがある。しかし人形浄瑠璃「夏祭浪花鑑」などは、大阪の侠客の暴力を描いており、後のやくざ・暴力団ものを先取りしていたとも見える。しかし本格的には、今東光の『悪名』シリーズ、また1975年頃以降の暴力団映画や、『嗚呼!! 花の応援団』『じゃりン子チエ』等のマンガ作品がそのようなイメージを強化したものと思われる。

(中略)

 ここで、関西外を舞台にした作品に登場する典型的な関西弁キャラを、昭和時代の作品からいくつか挙げておこう。これらはいわば、関西弁キャラの“古典的”な例であると言える。

関連キーワード

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン