番組MCのヒロミと東野幸治(番組公式インスタグラムより)
「関東の個人視聴率」を確保したい
人口もスポンサー企業も多い東京での視聴率獲得が重要なことは言うまでもないでしょう。
しかし、東京の人々は仕事、会食、趣味、自分磨き、ネット発信などにかける時間が長く、テレビ番組をリアルタイムで見てもらうハードルは上がる一方。それでも「視聴率調査で重視される関東地区の個人視聴率を獲得するために、埼玉、千葉、栃木、群馬、茨城の人々をおさえよう」という戦略がセオリーの1つとなっています。
その最たるものが、この5県をフィーチャーした企画であり、なかでも名物グルメ、スーパー、小旅行あたりは基本のコンテンツ。地元での局地的な高視聴率のほか、ライバルとなる隣県、さらに東京でも中高年層で一定の数字が期待できるため、関東地区の視聴率として壊滅的な状況を回避しやすいところがあります。
ただ、東京や神奈川の人々にとって積極的に見たい内容ではないことが多く、特に若年層にとって「テレビはつまらない」と感じる理由の1つにあげられやすいのも事実。また、「関東以外の視聴者を軽視している」とみなされることも多く、「キー局が本格的に関東ローカル化している」と未来を危ぶむ声も少なくありません。
「延命措置」だけでない複数の目的
つまり、本当はできれば避けたい企画であり、「背に腹は代えられぬ」という現実がうかがえますが、「延命措置に過ぎない」というのが現実的なところ。今回のような関東の特集は「ヒット企画を探し当てるまでのつなぎ」「新番組の準備期間を稼ぐ」「MCやレギュラー出演者に努力したという姿勢の提示」が事実上の目的となるケースが続いています。
ちなみに中京テレビ制作の『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日本テレビ系)、読売テレビ制作の『秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系)は、在名局・在阪局の番組だけあって関東だけでなく全国が対象。もともとそれが番組コンセプトのため、キー局による関東の特集のような強引さはなく、エンタメとして受け入れられています。
本当は『タミ様のお告げ』も延命措置のような関東の特集ではなく、思い切った企画を仕掛けていきたいところ。それが現状叶っていないところにかなりの危機的状況がうかがえますし、スタッフも出演者も本意ではないかもしれません。
決して「関東の特集が良くない」ということではなく、問題は不振から本来のコンセプト無視で採用してしまうこと。そんな戦略は賢くなった現在の視聴者に通用しないだけに、今こそスタッフの企画力が試されているように見えます。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。