自民党役員会に臨む(左から)森山裕幹事長、石破茂首相ら=。8月262日、東京・永田町の同党本部(時事通信フォト)
選挙で負けた陣営はトップが責任をとって退く、が常識のように思われてきたが、石破茂首相については、そうした声が上がるのは自民党内だけで一般の有権者には広がっていない。臨床心理士の岡村美奈さんが、なぜこれまでの”当たり前”が通用しないのかについて分析した。
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石破政権の支持率が急上昇している。今週に入り、各新聞社などによる世論調査の結果が出てきたが、どこも軒並み内閣の支持率はアップ、3割台を回復した。参院選の結果を受け石破首相が辞任するべきだと「思う」より、「必要ない」とする回答が増加。たとえそれが他に適当な首相候補がいないから、政権交代できる党がないからという消極的支持であっても、”石破おろし”の行く手を阻んでいる。支持率はなぜ急上昇したのか、各メディアはその分析と解説に熱心だ。
去年の衆院選、今年の都議選、そして今年の参院選。3度の選挙にすべて負けた石破首相がなぜ辞任しないのか。自民党の議員たちによる党内世論からすればそうだろう。選挙で負ければただの人といわれてしまうのが議員たちだ。次の選挙が間近に想定されている以上、石破おろしをしたくなる気持ちもわからなくはない。
だが国民世論はそう思っていない。世論調査の結果からしても、国政選挙で敗北したのは、すべて石破首相のせいというより自民党自体の問題と捉えている人が増えていることがわかる。
選挙の敗北は党の問題と考える人たちにとって、自民党議員による石破おろしは、石破首相を生贄として差し出す自民党の責任転嫁に映るのではないだろうか。
責任転嫁は自分の罪や責任、失敗などを他人に押し付け、なすりつけること、自己保身の最たるものだ。もし石破首相が自民党の中で重要視され、一強と称された安倍政権で重用され、次々と主要ポストについていたなら、石破おろしに反対する国民は少なかったかもしれない。だが石破首相は党内政治に強くなかった。首相就任後も党内に味方は少ないと報じられていた。党内で石破首相の影響力は弱かった。それだけに、石破おろしの波が活発になるほど党の責任転嫁に見えてくるのだ。