横山剣の『昭和歌謡イイネ!』(イラスト/佐野文二郎)
放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、極私的歌謡史について。
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ビリー・バンバンのお兄ちゃん(享年81)が他界。柄になく切ない。大学出て22歳でこの芸能マスコミに入り、いきなり師から「明日野球の試合だ、高田いけるか」。師は日劇の演出家にして『夜のヒットスタジオ』の企画構成でバカ当たり中の塚田茂。神宮の草野球場へ行くと相手はビリー・バンバンチームだった。
業界に入って初めて見た芸能人がビリバン。『白いブランコ』で大ブレーク中の兄弟デュオ。その前はここにせんだみつおがいたときく。私は小さく『白いブランク』と呼んでいた。私は兄の投げる球をライト前へ。いやぁドキドキした。その後取材等で何度も会うようになり自宅に呼ばれてゴハンを食べさせてももらった。大好きなこの曲でお別れ『さよならをするために』。
最早オールドメディアでオールドライフを送る団塊の世代にとって心地良いのはオールディーズ。ビリバンチックな毎日を送る私に嬉しい本が出た。横山剣の『昭和歌謡イイネ!』。当誌で大好評連載していたものを担当のN里が珍しく努力して一冊にしたもの。「早く連載も再開して第2弾をすぐ作れよ」と口をすっぱくして言っているのだが。何しろ片寄った極私的120曲である。選曲のチョイスが内角をギリギリえぐってくる。
北島三郎やタイガースを取りあげるのは普通だが、どんな歌謡史の本にも出てこないような荒れ球も投げてくる。何しろ曲に歌手に想い出にキチンとみんな色濃くかかわっているから面白い。納得の選曲。
例をあげると『夜の訪問者』小川順子(1975年)。誰が覚えてるんだ? この曲の頃、私は日芸の同級生フジTVのWと『スターどっきり(秘)報告』を当てていた。Wは麻丘めぐみにどっきりを仕掛けそのまま結婚へ。私の家(西新宿)の近くに住んだ。私は仕事が終わるとこの新婚の部屋へ行きいつも一杯飲んだ。「誰か友達呼べよ」というとめぐみちゃんは仲良しの小川順子を呼んだ。明るくていい子だった。その数年後引退。有名なお医者様と結婚。私にとってはそのまま「夜の訪問者」だった。
私がなつかしい人間のことまで書いてあってマニアックで嬉しい。ディスコ歌謡を広めた伝説すぎるトリオ。『ライダー・ブルース』のクック・ニック&チャッキー(1970年)。我々世代の東京の不良ならみな知ってる。新宿のディスコ“ジ・アザー”の従業員であの“ソウルブラザーズ”である。みごとなステップ。
チャッキー新倉が私の高校の不良同級生。書いてもらって本当に嬉しい。ちなみに私と新倉と同じクラスに話題の『爆弾犯の娘』の爆弾犯がいた。
※週刊ポスト2025年10月17・24日号