小泉進次郎氏と元神奈川県議会議長の牧島功氏(写真提供/牧島功氏)
「自民党員」の性質が変わった
そもそも、右の1割とも言われる「保守岩盤層」を中心に考える見方について、疑問視する見解も自民党内にはある。
筆者は昨年の前回総裁選の後に、『週刊ポスト』(2024年11月22日号)で“神奈川のドン”とも呼ばれた元神奈川県議会議長の牧島功氏にインタビューしたが、近年の「国民とズレた政党になった」と憂いていた。
牧島氏は進次郎氏の祖父・純也氏(元防衛庁長官)、父の純一郎氏(元首相)の秘書を務め、進次郎氏のことも神奈川県連で支えた小泉家の国家老だ。
その牧島氏が着目していたのは、野党転落時代(2009~2012年)に70万人強まで激減した自民党員が、政権復帰後の約10年を経て100万人超まで回復するプロセス。その穴を埋めた30万人は安倍晋三氏を支持する右派が多く、年齢も高い。結果として自民党員のなかに穏健な中間層の力が落ちたと語っていた。
そして、一強にあぐらをかいた自民党が広く国民の暮らしに寄り添う力を失ったと嘆いた牧島氏は、「地域と結びついた、足腰の強い真の国民政党に作り直す必要がある」と述べた。菅・岸田政権下でも続いた“安倍政治”との決別を唱える牧島氏の主張に筆者は説得力を感じたが、インタビューの4か月後の今年2月、心不全のために亡くなった。
臨時国会での首班指名選挙は日本維新の会との政策協議を意欲的に進める高市氏が制する公算が強まっている。多数派工作を進める過程で高市氏は、参政党の神谷氏に協力を要請したことが注目を集めた。
神谷氏は即答しなかったとものの、積極財政派の高市氏が「政策が近い」と述べたと明かした。神谷氏自身、8月末には、最高顧問(現副総裁)の麻生太郎氏と面会したり、街頭演説で外国人政策の具体策を打ち出す政府の動きに「自民党はすばらしい」と発言したりもしており、両者の接近は誰の目にも明らかだ。
「岩盤保守層」を追い、参政党に寄っていく姿勢を見せる高市執行部の姿に、「自民党がどんどん狭い方、狭い方へと向かっている」と危機感を強める中堅議員もいる。
牧島氏が求めた「真の国民政党を作り直す」という新章がめくられるのは、まだ先になりそうだ。
◆取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)