2021年入団発表会見時の森木大智(右)と矢野燿大監督
阪神がソフトバンクと日本シリーズで激闘する約1か月前、10月上旬に戦力外通告を受け、縦縞のユニフォームを脱いだのが2021年ドラフト1位右腕の森木大智(22)だ。高卒4年目という短期間での“非情通告”の傍らで、森木と同級生の大学進学組がドラフト会議で指名され、プロ球界入りを果たす――その心境を、ノンフィクションライターの柳川悠二氏が訊いた。(文中敬称略/前後編の後編。前編から読む)
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今年のドラフト会議では、大学に進学した森木の同級生が指名を待った。なかでも、早稲田大学の伊藤樹は、仙台育英の付属である秀光中時代に全国の舞台で戦ったライバルであり、親交の深い選手だ。その後、仙台育英で1年夏から甲子園のマウンドに立った伊藤は、森木とは異なる大学進学という道を選び、今秋のドラフトの上位候補だった。そして、中高時代を過ごした仙台を本拠地とする東北楽天に2位指名された。森木と入れ替わるように、森木と並び称された元「スーパー中学生」がプロの舞台に立つというのも、不思議な因縁だろう。
4年前、森木の両親は伊藤のように大学に進学してからプロに進む道を勧めたという。また高知中、高知高と6年間にわたり指導した監督の浜口佳久は「順位縛りをして、下位指名だったら大学進学」のプランを提示した。しかし、何位でもプロに進みたいという本人の意思は固く、外れ1位とはいえ阪神の指名を受け、入団を決断。浜口はいま、こう話す。
「結果を残せなかったので戦力外は仕方ないと思う反面、ちょっと早過ぎるのではないかと思ってしまいます。厳しい世界であるのは当然理解していますが、一昔前ならば、高校からプロに入った場合、最初の4年間は育成期間であり、同い年の大卒選手が入団してくる5年目からが勝負という認識でいました。現在は戦力外になるタイミングが年々早まってきていますよね」
プロ側の見切りが早くなっているからこそ、今年の選抜を制した横浜高校から早稲田大学に進学する阿部葉太(高校日本代表外野手)のように、大学経由のプロ入りを目指す高校生が増えているのだ。
「こういう事態になったからには、あの時に大学に進学する道を勧めれば良かったかなと思ってしまいます……」
ただ、森木自身に4年前の決断に後悔はない。
「やはり、野球をやる上でプロ以上の環境ってないし、すごい人たちに挟まれて、一緒に投げたり、アドバイスを求めたりできることは何より貴重な経験だったと思います」
