世代ナンバー1といわれた高知高時代
「もう一度、挑戦したい」
それにしても大きな期待を抱き大金を投じて獲得したドラ1をたった4年でリリースするのはあまりに非情ではないか。
「高卒のドラ1は、成績を残せていなくても、だいたい5年以上は在籍していますよね。(ドラ1ならば)5年は球団に在籍できるという安心感を他の選手に与えないためにクビを切られたのかな、と思うこともある」
そんな泣き言を口にしたあと、森木は後悔したような表情をみせ、すぐに前言を撤回した。
「やはり単純に自分が結果を残していないからというのが妥当な戦力外の理由だと思います」
プロの門を叩く同級生の伊藤について森木はこう思いを吐露する。
「ずっと連絡は取り合ってきましたから、頑張って欲しい。だけど、僕から彼に対して言えることは何もないですね」
森木は、今年から選手会主催となった12球団合同トライアウト(11月12日)に参加する。NPBの球団が拾ってくれたらこれ以上ない再就職先だが、国内の独立リーグや社会人でも声がかかれば選択肢に加えるつもりだ。
「とにかく野球ができて、もう一度プロ(NPBの球団)に行ける環境があれば挑戦したい。まだまだ22歳。元気ですから」
4年間在籍した阪神は、福岡ソフトバンクとの日本シリーズに臨んでいる。
「今季の阪神投手陣で活躍された才木浩人さんや石井大智さん、岩崎優さんは共通してキャッチボールを大事にされていました。相手の胸というか、身体の幅に収まるように、中腰に構えたグラブの高さにずっと投げ続けるんです。その練習さえしていれば、マウンドでも制球が定まることを学びました」
人目を忍ぶように室内でばかりトレーニングしていた森木が、キャッチボールの時だけグラウンドに姿をみせた理由がこれだろう。青空の下、森木は中腰に構えた相棒のミットを目がけて力強いボールを投げ込んでいた。
(了。前編から読む)
■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
