心を通わせる友人もいて充実した日々を送っていた
「その時に弟が『彼女と別れたい』と言い出した。くわしい理由については話してくれませんでしたが、『彼女がめっちゃ泣いていた』と言っていて、悩んでいる様子でした。今までにはそんな不仲を匂わせる言葉は聞いたことがなかったので、すごく驚いたのを覚えています」(同前)
兄の不安は的中する。そのやりとりがあった2日後の10月4日、浅香容疑者と会うために出かけていくバダルさんを見送ったのが、生前の弟を見た最後の姿となった。
「4日は弟が彼女といつも会っていた土曜日だったのですが、この前のことがあったので、てっきりもう別れたと思っていたのです。だから居酒屋の仕事が終わった後、弟に『もう彼女と会う必要ないんだよね?』と聞いたら、『今日は最後に会う』と言って、家を出てホテルに向かいました」(同前)
翌日、始業時間になってもバイト先の居酒屋にバダルさんが姿を現すことはなかった。おかしいと思った兄は、GPSでバダルさんの現在地を確認すると、警察署を示したまま動かない。
「変な胸騒ぎがしました。すると、夕方に警察署から連絡があったんです」
そこで兄が見たのは、バダルさんの変わり果てた姿だった──。
(第3回につづく)
