2020年6月、4人がクロスボウで撃たれた兵庫県宝塚市の現場付近を調べる捜査員(共同通信)
被告人の責任能力について
判決が言い渡された10月31日、大雨にもかかわらず神戸地裁には多くの傍聴人がかけつけ、傍聴席は抽選となった。以下、判決内容を検察官、弁護人の主張などを踏まえながら要点をお伝えする。
裁判長は精神鑑定の結果について「高度に信用性が認められる」とした。自閉スペクトラム症は動機形成に影響を与えたが著しいものでなく、犯行時の被告人は心神耗弱状態でなく、完全責任能力(刑事責任が問える能力)があったと認定した。
弁護人は自閉スペクトラム症が原因で、0か100かの判断に至ってしまったと主張していた。裁判長は一定程度認めつつも、ナイフを凶器とすることを感情的に避けたり、弟の引越しをきっかけに犯行日を決めたりなど、犯行を通じて合理的判断があったとし、感情を制御する能力があったと認定した。
続いて量刑を定めた理由について、検察側の死刑求刑も踏まえ、同種事案を比較検討し、総合的に判断したと説明した。
まず結果として、殺害される理由すら分からないまま3名が死亡し、生き残った叔母も後遺症と、死の恐怖に直面したことによる精神的被害を被った結果について、その悪質性と重大性を指摘した。
また事前に頭蓋骨や凶器特性の調査をし、犯行を乗り越えるために自己暗示をかける努力をするなど、計画性についても「極めて高い」と評価した。
弁護人は懲役25年が相当と意見を述べていたものの、「有期懲役を選択できるものではない」とした。
