凶行に及んだ野津容疑者
判決の詳報:死刑回避の理由
一方で、死刑ではなく無期懲役とする理由についても述べた。
各被害者に対してボウガンで攻撃した回数は1〜2回であり、その態様は執拗ではないと評価。また特に重いとされる金銭を求めての犯行と異なる点や、一度の機会での犯行は、継続的な犯行より悪質性は低くなるとも評価した。
これらから、有期懲役は認められないが、ただちに死刑を選択するには動機の検討が必要であるとした。
裁判長からこれまでの被告人の生育環境、家族との関係から日常生活もままならなくなった経緯などが改めて述べられる(詳細はこれまでの記事をご参照ください)。第三者にも頼れず、被告人自身が解決するにはいかんともしがたく、一方的に非難できないなどとした。
その他事情を総合的に考慮し、事件による結果は誠に重大であるが、動機形成過程において被告人に有利に採用できる事情もあり、同種の死刑判決事案と比較して「真に死刑選択がやむを得ないとも言えない」として、「生涯かけて罪に向き合わせる」ために無期懲役の判決とした。
判決の言い渡しは40分近くに及んだ。被告人は証言台に座っており、傍聴席からは背中しか見えなかったが、裁判長が理由を読み続ける中で、これまで以上に首を下にもたげながら聞いていた。
公判では自ら死刑となることを望み続けた被告人。判決が言い渡された後、被告人は刑務官に促されても、なかなか立ち上がることはできなかった。
(了。前編から読む)
◆取材・文/普通(裁判ライター)
