業者から送られてきた偽造免許証のサンプル(筆者提供)
レンタカー業者は「見破ることは難しい」
偽造免許証の購入者を装いウィーチャットでメッセージを送ると、数分後に返信があった。
「免許証は1枚1万円で明日発送して明後日には届きますよ」
こう告げると、偽造免許証を作成するうえで必要な情報を求めてきた。
「住所と氏名、顔写真を送ってください。免許証のサンプルが出来たらサンプル写真を送るので内容を確認してください」
慣れた様子で淡々とメッセージが送られてくる。気になるのが免許証の偽造のレベルだ。業者に最近作成した偽造免許証の写真をサンプルとして見せてほしいと尋ねると、一枚の写真が送られてきた。一部にはモザイク処理が施されていたが、実際に偽造品だとすれば、文字のフォントや色彩など本物の免許証と見比べてみても違いは判別できない精巧さであった。
すでに摘発事例もある。2024年には中国人留学生が日本の運転免許証を偽造し逮捕されている。自宅からはカードプリンターや約1400枚の白色プラスチックカード、偽造された運転免許証などが押収され、組織的な偽造が疑われた。
懸念は、そうした偽造免許証でレンタカーが借りられることだ。昨年5月、偽造免許証を所持していたインドネシア籍の男が、レンタカーを利用し違法ガイドを行なっていたとして逮捕された。
レンタカー業者はどのように免許証の確認をしているのか。中国人観光客のレンタカー利用が増えている沖縄県内のレンタカー業者に話を聞くとこう答えた。
「提示された免許証のコピーを取って貸し出しているというのが現状です。目視でも確認しますが、精巧なものだと偽造免許証なのか見破ることは難しい。業界全体でも免許証の真贋をチェックする体制は確立されておらず、企業や店舗ごとに対応しているのが現状です」
偽造業者に、記者であることを明かし、違法性の認識について訊ねると返信は途絶え、後日再度確認したところ業者のSNSアカウントは消えていた。
中国事情に詳しいジャーナリストの周来友氏はこう指摘する。
「偽造証明証業者は以前から存在していました。以前の偽造免許証は、漢字の一部が中国で使用されている簡体字だったりと目視ですぐに分かりました。最近は文字や色彩だけでなく、本物と同じような台紙を使っているので肌触りも本物と遜色ないレベルとなっています。もともとは身分証の用途とするための偽造でしたが、今般の規制強化を受けて今後、日本で運転するための偽造品として拡散することが懸念されています」
警察庁にも見解を求めたが、期限までに回答は得られなかった。
(後編に続く)
【プロフィール】
廣瀬大介(ひろせ・だいすけ)/1986年生まれ、東京都出身。フリーライター。明治大学を卒業後、中国の重慶大学に留学。メディア論を学び2012年帰国。フリーランスとして週刊誌やウェブメディアで中国の社会問題や在日中国人の実態などについて情報を発信している。
※週刊ポスト2025年11月21日号
