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【大阪・天下茶屋 桝屋酒店】手製の旨いつまみで今太閤たちが酒を交わす

 南海本線・天下茶屋駅から徒歩5分。商店街を抜けた先の通りにある『桝屋酒店』は、夜勤明けの人が飲みに来て朝から賑わいを見せる。「お帰り」と明るい声で迎える2代目店主の上田定さん(59)だ。

「この通りは昔、天下人の秀吉公が通ったことで大阪一栄えたんや」と天下茶屋の地名の由来をにこやかに語る。

「天下人が通ったから天下茶屋になった。もう毎日が縁日みたいな通りでな、みんな縁台を出して商売したもんや。駄菓子屋もいっぱいあった。すれ違う人が横向きになって『すんません、すんません』と言いながらやないと、通られへんくらいの人出やったんやで」

「そうそう。時が流れて、わしが来るようになったのはほんの30年前よ。はっはっは。今ではここらは鄙びた風情やけどな」とカウンターに張り付いて飲んでいた常連が、冗談めかして話す。「これがうまいねん」と店主のお手製豆腐をつまんでいた。

カウンターで仕事明けの一杯を楽しむ

カウンターで仕事明けの一杯を楽しむ

 確かに、今では「ここが大阪のど真ん中か!? 」と一瞬戸惑うほど、のんびりしている。縦書きの店看板が並び、昭和の香りがする情景が広がる味わい深い一角だ。

 いちばん早くから来ていた40代の常連は「仕事明けで、晩酌と晩御飯やねん」と言いながら刺身を口に運び、缶を傾けながらテレビを見ている。画面は関西芸人が映っているワイドショー。

 夜から朝まで働く人々にとっては、喉の渇きを癒やし、胃袋を満たす大切な店だ。やがて「お勘定や。帰ってお風呂入って、はよ寝よ。また明日な」と軽く手を挙げて店を出て行く。残った常連たちが「おつかれさん」と声を掛ける。

「オレは家がすぐ裏だから、ここは自分ちの“だいどこ”(台所)みたいなもんですわ」と言う別の常連(50代/観光業)が、「ここはな、朝っぱらから来る常連、昼から来る常連、夕方に来る常連。波が3つあるんや」と補足して教えてくれた。

「オレか? オレは隙間があれば飲む。隙間ってわかります? 時間の隙間に飲むし、カウンターの隙間で飲むんですわ」

 とにもかくにも、昔からここにあって、昔からいつも開いていた店だ。その安心感たるや。この町に住む呑助からの厚い信頼につながっている。

住宅地の中で、働き者たちの胃袋を今日も癒す

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