山上徹也被告(共同通信社)
安倍晋三元首相が2022年に奈良市で演説中に撃たれ死亡した事件。殺人罪などに問われている山上徹也被告(45)の公判が、奈良地裁で行われている。10月下旬から毎週のように続いていた公判だが、12月4日で被告人質問、証人尋問が終了。12月18日に被告人の最終陳述等を行い、1月21日に判決が言い渡される予定となっている。
山上被告ら弁護側は法廷で「母親が旧統一教会にのめりこみ、多額の借金をして家庭が崩壊した」「教団とつながりがあると思った安倍氏を狙った」などと主張。行われた被告人質問では、山上被告の過酷な生い立ちや、当時のリアルな経済状況などが明らかになった。【前後編の前編】
友人に「統一教会のことは言えず」
声はぼそぼそとしながらも、淡々と質問に答え続けた山上被告。学生時代から振り返った被告人の生い立ちは、供述を要約すると以下のようになる。
被告人の学生時代、旧統一教会に対する母親の多額の献金等により、家族内では不和が続いていた。父代わりの祖父と兄は母親を叱責する一方で、被告人は時に母をサポートするなど家庭内のバランスを保つような役割を担っており、親を頼る、信頼するという経験をしないまま育っていったという。
高校は奈良県の進学校に通った山上被告。応援団に所属したり、女性との交際期間があったりと、一見すると安定した学生生活を送っていた。友人に家庭の不和を相談することもあったが、それが宗教絡みである点などには触れられなかったという。
周囲が大学受験の勉強を進める中、家計状況から選択肢は狭くならざるを得ず、最終的に合格した大学はあったものの進学を選択することはなかったという。
その後、叔父の助けや、旧統一教会からの献金の一部返金を受けたことで、複数の資格を取得することはできた。しかし当然、多感な時期に行動を制限されたことに変わりはなく、精神鑑定医の聞き取りに対しては以下のように述べたと明かされた。
〈必要なときに(お金が)なかった、その後にまとまって来ても今さらどうなるものではない。周囲の同級生は子ができ、家のローンを組むなどしている。こちらは(実家が)破産しているので(それが)できなかった〉
