ソフトバンクのドラ1・風間球打には球団から就職先の提案が
勝負の世界であるNPBでは毎年、多くの選手が野球から離れるが、そうした元選手たちを積極的に採用する企業がある。2025年のトライアウト会場となったマツダスタジアムには、そうした一般企業の「スカウトマン」たちが駆けつけていた。それぞれにどのような採用理由や事情があるのか。ノンフィクションライターの柳川悠二氏が迫った。(文中敬称略)【全3回の第3回。第1回から読む】
選手の希望によってはソフトバンク株式会社、通信業の道も
今年のトライアウトでは、高卒4年で戦力外となったふたりのドラ1投手──阪神の森木大智とソフトバンクの風間球打も注目された。
最速143キロの投球を見せた風間は、かつての剛速球を取り戻せない葛藤があったと4年間を振り返り、戦力外を告げられた時に、球団から「転職先」の提案も受けたと明かした。
「まずはトライアウトに参加して、野球人生のケジメをつけようと思っていました。このままオファーがなければ、球団の提案を受け入れようかなと考えています」
風間は12月10日に現役引退を発表し、トライアウト後に縁があった総合不動産会社への転身を明かしたが、戦力外通告時に球団からセカンドキャリアの提案を受ける例は珍しいだろう。
ホークスは3軍制を敷いた2011年以降、育成選手の獲得に力を入れ、2023年からは4軍制に。毎年、十数人ほどの戦力外選手が出るため、セカンドキャリアのサポートを球団の重要な取り組みとして位置づけているという。
ソフトバンク株式会社からホークスに出向している球団統括本部本部長兼チーム戦略部部長である小山亮が話す。
「活躍してもらうことを大前提として入団してもらうわけですが、挑戦が道半ばで途絶えてしまうケースが当然あります。戦力外となって初めてセカンドキャリアについて選手に提案するのではなく、入団交渉や契約更改のタイミングで球団としての取り組みは説明するようにしています」
広報業務やブルペン投手・捕手、傘下のアカデミーの指導者など「ホークスの裏方」を提案することもあれば、選手の希望によってはグループ会社であるソフトバンク株式会社、通信業の道を示すこともあるという。
巨大戦力を誇るホークスの選手には苛烈な競争が待つからこそ、志し半ばで球界を去らざるを得ない元選手を手厚くサポートするのだ。
