003型空母・福建。電磁カタパルトを空母として世界で初めて実用化(写真=新華社/アフロ)
原子力潜水艦が“海中ミサイル基地”に
潜水艦も脅威となる。現在、中国は094型原子力潜水艦など原潜を12隻、通常動力型を60隻以上保有するとされる。
「原潜は、台湾やアメリカの艦艇や潜水艦を攻撃する魚雷だけでなく地上の基地に向けて発射されると想定できます。通常動力型潜水艦の能力そのものは日米のほうが高いと言われていますが、保有数は日米台湾の総数の2倍程度と中国軍が圧倒します。多くの潜水艦が出航するところを偵察衛星に見せれば、米軍はそれらの位置を探知しなければならず、その間、横須賀に拠点を置く第七艦隊の空母打撃群を自由に動かせません」
人工知能搭載の犬型ロボット
着上陸作戦で投入が予測されるのが、去年12月に進水し、現在試験中の076型強襲揚陸艦・四川だという。
「揚陸艦として世界初の電磁カタパルトが採用され、空母・福建と同じ最新の戦闘機をはじめ、無人の戦闘機、偵察機など多くのドローンが搭載される見込みです。人員、物資の輸送にとどまらない“軽空母”的な存在になるかもしれません。中国の通常の一個連隊を運び、沿岸域の制圧を行ない、後続の部隊を続々と送り込む橋頭堡(敵地侵攻のための拠点)を構築することでしょう」
9月の軍事パレードでは、地上戦を想定した新兵器も公開された。
「100式戦車は、乗員がARゴーグルを装着することで360度の視界が得られる最新型で、世界が注目しています。また実力は未知ながら、人工知能を搭載した犬型ロボットも市街戦が念頭にあるとみられます」
巨大な覇権国家と隣り合う地政学的リスクと日本はどう向き合うべきか、改めて問われる。
取材・文/鈴木洋史
※週刊ポスト2025年12月19日号
